こうした事情と歴史を踏まえて企画されたのが、ホリプロ制作の「2時間サスペンス THE MOVIE」である。隆盛を極めたサスペンスドラマの新たな可能性を、テレビではなく映画館という舞台で届けたいという発想は、率直に言って見事だ。 「灯を消さないためには新作が必要。テレビが難しいなら、映画でやる」 この企画について、ホリプロ社長の菅井敦氏はそう語っているが、その言葉どおりの覚悟を感じる。
もっとも、大手プロダクションのトップである以上、心意気やノスタルジーだけで物事が成功するほど甘くはない。だが私は、菅井氏には勝算があると見ている。そのポイントは二つある。 一つは、ホリプロが抱える芳醇な俳優層だ。「2時間サスペンス THE MOVIE」第一弾『テレビショッピングの女王 青池春香の事件チャンネル』の主演は名取裕子氏。第二弾の主演は、「2時間ドラマの帝王」と呼ばれる船越英一郎氏である。両者ともホリプログループ所属。さらに言えば、「2時間ドラマの女王」と称されてきた片平なぎさ氏もホリプロ所属だ。2時間ドラマを長年見てきた視聴者にとって、これ以上ないほど“顔が見える”キャスティングが可能なのは、大きなアドバンテージだ。 もう一つは、ホリプロが自前の制作部門を持っていることだ。菅井氏自身、多くのタレントや俳優のマネージャーを務め、制作現場を叩き上げで経験してきた人物で、ドラマ制作部門を長年率いてきた。自社で制作すれば著作権は確保できる。再上映や配信展開のたびに収益が積み上がる構造を作れる点は、極めて現実的で強い。自社のタレントを起用し、自社で資金を投じ、自社で作品を持つ。その循環を回せるのがホリプロの強みだ。 しかし、私が最も着目しているのは菅井氏の手腕だ。 本シリーズは従来の映画の製作委員会方式に加え、BS日本(BS日テレ)と日本映画放送が“アライアンス”として参画する設計。報道によれば、幹事と制作・配給を担うのはホリプロ。共同配給には、全国に約100館のイオンシネマを展開するイオンエンターテイメントが名を連ねる。二次利用業務の窓口は、映画・テレビ番組のパッケージ販売や放送権ビジネスを長年手がけてきたミツウロコが担う。さらに、コンテンツの事業設計や権利ビジネスの開発支援を専門とするTK事業開発研究所がプロジェクトを補完するかたちで、体制の骨子を盤石に組んでいる。この仕掛けを作り出したのは、菅井氏に違いない。