【今日のタブチ】トランプ政権のキューバ包囲網に覚える“強烈な違和感”――国民の生活と個人のルーツを「武器」にする政治の異様さ

トランプ政権の対キューバ政策を見ていると、まず引っかかる点がある。
米国が長年キューバを“民主化の対象”として扱ってきた流れのなかで、トランプ氏はキューバを「共産党独裁体制」と位置づけ、その体制の弱体化、あるいは事実上の転換を狙って圧力をかけ続けてきた。
その大義は分かるとしても、私の違和感は別のところにある。
まず、自由化を掲げながら、実際には石油という国の動脈を締め上げる路線を前面に出していることだ。石油はキューバの電力も交通も医療も物流も支える血流のようなもので、ここを細らせれば国民全体の暮らしが一気に止まる
トランプ政権は石油という動脈を狙い、まずベネズエラ産原油の流入を制裁で遮断し、キューバでは燃料不足が深刻化した。配電や公共交通だけでなく、病院の発電機燃料まで逼迫したと言われる。
さらに圧力はメキシコにも及び、“最後の生命線”とされた供給にまで影響が出た。ついにはメキシコ政府が「対キューバ出荷を一時停止した」と公に認める事態となり、米国の圧力が実際に機能していたことが露わになった。
こうした経緯を見ていると、狙われているのは“政権中枢”というより、国全体の生活そのものだと感じざるを得ない。
石油という動脈を断てば、まず打撃を受けるのは一般市民だ。生活のボトルネックが次々に詰まり、人々が日常そのものを失っていく。私はこの“国民を先に追い詰める”ような手法に、まず強烈な違和感を覚える
しかし、私が感じる違和感はそこで終わらない。
さらに深いところに、もっとざらついたものが残っているのだ。

それは、この強硬策の“顔”としてルビオ国務長官を立てている点だ。
ルビオ氏は両親がキューバ移民のキューバ系アメリカ人で、彼自身、公的な経歴でも“キューバをルーツに持つ”ことを繰り返し語ってきた人物だ。この“ルーツ”は、彼の反共姿勢や対キューバ強硬論の背景として、一貫して存在感を放ってきた。
彼は幼い頃から、家族――とくに祖父――から“共産主義が故郷を壊した”という経験談を聞かされて育ったと言われる。こうした家族史が、彼の反共姿勢や対キューバ強硬論の芯を形づくってきたのだろう。
過去の発言を振り返れば、ルビオはキューバやベネズエラの体制に対して「支援を断てば崩れる」という構図を繰り返し主張し、制裁強化・石油遮断・軍系企業への圧力といった路線を積極的に推し進めてきた。実際、石油供給網への制裁や、ベネズエラ原油のキューバ向け流通を断つ政策の推進にも深く関与してきたとされる。
キューバ政府側からは、彼の対キューバ政策が“個人的アジェンダ”に引きずられているという批判すら公然と出ている。

ここに私は、政策そのものとは別の“政治の気味悪さ”を感じる。
外交は本来、感情と距離を置くべき領域だ。にもかかわらず、“あえて”ルーツを持つ人物に最大圧力を執行させる。この構図は、人間の根源的な愛憎――ルーツだからこそ複雑になる感情――を政治が利用しているように見える。
しかも、それがフロリダのキューバ系コミュニティという重要な支持基盤への強烈なメッセージとして機能している点を考えると、なおさらその演出が意図的に見えてくる。

石油を断ち、生活を支える“動脈”を絞って、政権より先に国民を痛めつける。家族の記憶や個人的な生い立ちや愛憎を利用する。
それらのやり方に、私はどうしても冷たさ以上のもの――政治が感情と人間のルーツを“武器”として利用する冷酷な構図――を感じてしまうのだ。

食料も燃料もなく、観光客もいなくなったキューバ
「CNNウェブマガジン」より

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