【今日のタブチ】フジテレビが港前社長と大多元専務を提訴~議論の本質を誤魔化す「トカゲの尻尾切り」か?「批判をかわすための方便」か?はたまた総務省への「説明責任」か?

フジテレビの問題が留まらない。
中居氏側の反論が日々、メディアやSNSを騒がせているが、今度はフジテレビが港浩一前社長と大多亮前専務を提訴するという。賠償請求も視野に入れているというが、こういった昨今の動きを私は懐疑的に見ている。
それは、問題の本質や議論の核を見えなくさせることになるのではないかと懸念するからだ。
そもそもこの問題がここまで大事になったのはなぜなのか?もちろん、元フジテレビアナウンサーの女性の人権を無視した行動や企業倫理・ガバナンスが問われることは間違いない。だが、それらのことだけに目が行ってしまうと、本来考えなければならない「テレビ業界全体における構造的な欠陥」がうやむやになってしまう。
中居氏の反論を巡る騒動や今回の提訴は、そういった危険性を招く可能性があることを指摘しておきたい。
特に昨日発表された提訴は、幹部の責任を限定的に切り離すことで、組織全体のダメージを最小限に抑えようとしているように映る部分がある。企業の不祥事において、責任の所在を明確化する一方で、上層部の本当の責任がどこまで追及されるかはケースバイケースである。今回も、問題の本質がどこにあるのかを深く掘り下げるよりも、局のイメージ回復を優先しているような印象を持ってしまったのは私だけではないはずだ。
こういった点はしっかりと指摘し、注視する必要がある。特にこれは同じメディアやテレビ局の役目だ。そういったことも含めた対応が、視聴者や業界関係者の信頼を左右する。曖昧な説明が続けば、逆に疑念を深めることになりかねないどころか、企業としての透明性が問われることになる。ひいては、テレビだけでなくメディア全体への国民の不信感が増すだろう。
私は、この提訴は今月末に予定されている株主総会を意識した行動だと推察している。特に、米投資ファンド「ダルトン・インベストメンツ」などの株主の批判をかわすために提訴を決定したと見ている。
もし「批判をかわすための方便」だとすれば、それはお粗末な話だ。
フジテレビは、第三者委員会の調査報告書を受けて8つの具体的な改革策を発表し、その進捗状況を公表している。その点は評価できる。総務省への報告によると、8つの改革策のうち6つは「概ね実行済み」とされており、残りの施策については「準備中」または「株主総会後の新役員体制で実行予定」となっている。だが、どうもそれらは、対総務省への「対策」に過ぎず、電波の所有者であるはずの国民への説明は足りていないのではないか。「概ね実行済み」と決めるのはフジ自身ではない。国民であるはずだ。
フジテレビの対応は総務省への説明責任を果たすための「対策」としての側面が強く、視聴者である国民に対して十分な説明がなされているとは言い難い
日本のテレビ局は、公共の電波を使用する立場にある以上、本来は視聴者に対して透明性を持った報告や説明を行う責任がある。だが、今回のフジテレビの報告の仕方を見ると、スポンサーや行政機関への対応に重点を置いている印象が強く、視聴者への直接的な説明は限定的になっている可能性は否めない。
また、視聴者目線で見ると、テレビ局が「業界の内輪で問題を処理している」と映りかねない。国民が本当に納得できる形での説明が欠けているのではないか。例えば、番組内で特集を組んで詳細を解説する、社長や関係者が公の場で説明するといった動きがいまだにおこなわれていないのはなぜか。
視聴者との信頼関係を築くには、まだその道のりはほど遠いと言わざるを得ない。

「ANN NEWS」より

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