【今日のタブチ】ブラックフライデー“狂奏曲”――その裏で息切れする現場に、私が提案する3つの《改革》
ブラックフライデー。
アメリカの感謝祭翌日に始まるこのセールが、日本にやってきたのは、ほんの数年前のことだ。最初に仕掛けたのはイオンで2016年、Amazonが参戦したのは2019年、楽天は2017年頃から始めている。今では家電もファッションも、みんな同じタイミングで値札を下げる。まるで“オーケストラの協奏曲”。いや、“狂奏曲”だ。
でも、その裏側を想像してほしい。華やかな音楽の陰で、現場は息切れしている。
宅配便の再配達率は国土交通省の最新調査で約11.8%。11月から12月にかけては、ヤマトや佐川、日本郵便が「遅延のお知らせ」を毎年出すほど繁忙期だ。
運送業の有効求人倍率は厚労省統計で約2.5倍、全産業平均の倍以上。人手不足は深刻だ。
店舗も同じ。セール中は返品が増え、欠品も出る。流通経済研究所の調査では、セール期の返品率は通常より1.5倍程度に上がる傾向がある。クレームの質も変わる。価格表示のミス、在庫のズレ、取り置きの認識違い。現場の声を聞けば「楽しいイベント」どころじゃない。
まさしく、“ブラックな”イベントだ。
じゃあ、なぜ日本にブラックフライデーが必要なのか?
私はこう思う。年末のピークを分散させたいから。ボーナス時期やクリスマス前に集中すると、物流も店舗もパンクする。もう一つは、世界のECイベントに合わせるため。広告や在庫の管理が楽になる。そして、顧客データを一気に集めたい企業の思惑もある。理由はわかる。でも、それでも私は疑問を持つ。今のやり方は、日本の働き方や物流の現実と合っていない。
ここで、批判だけじゃなく、私なりの提案を3つ。
一つ目。ブラックフライデーを「分散型」にする。全国一斉じゃなく、地域や業種ごとに期間をずらす。物流と事前に調整して、ピークを分ける。
二つ目。返品を「前提」にした仕組みを作る。返品率が上がるのはわかっているんだから、再販ルートやアウトレットを事前に組み込む。返品を損失じゃなく、次の提案につなげる。
三つ目。置き配や宅配ボックスのインフラを、企業が負担する仕組みを作る。イベントで得た利益の一部を、地域の配送設備に還元する。セールが街を便利にする、そんな発想だ。
私はセールを否定しない。掘り出し物を見つける楽しさも知っている。でも、裏方が倒れない仕組みが必要だ。日本のブラックフライデーは、まだ「編曲中」だと思う。テンポを整え、負荷を分散し、インフラを強化する。それができれば、この“狂奏曲”は本当に美しい“協奏曲”になる。
「GIGAZINE」HPより


