【今日のタブチ】国連財政「7月枯渇」の衝撃――アメリカ不払いの裏側、私がアフガンで見た“本当の危機”
国連の財政が危機にある——そんなニュースが世界を賑わせている。しかも「このままでは7月に運営資金が底をつく」という具体的な時期まで報じられている。これは憶測ではなく、国連事務総長が加盟国に送った書簡で警告した事実だ。
では、なぜこんな状況に陥ったのか。
報道が指摘する最大要因は、最大拠出国アメリカがトランプ氏の意向によって分担金の支払いを事実上停止していることにある。
——では、そもそもアメリカに国連への支払い義務はあるのか?
ある。国連通常予算への拠出は“査定拠出”と呼ばれ、国連憲章に基づく法的義務だ。国連報道官も「これは国連憲章が定める負債だ」と明言している。それにもかかわらずアメリカは拠出を滞納し、さらに国連関連66機関からの離脱を宣言した。未払いは通常予算だけで約219億ドル。結果として、国連は2025年末に通常予算分だけで過去最大の約15億6800万ドル(約2,350億円)の未収金を抱え、資金繰りは極限まで痩せている。
ここまでは“数字”の話だ。しかし私にとって本当に問題だと思うのは、その先にある根源的な問いだ。
——国連は、誰のために存在しているのか?
私は2002年から2006年にかけて、アフガニスタンに通い続けた。『ガイアの夜明け』や、バーミヤン遺跡を扱う作品の撮影のためだ。あの国の乾いた空気の中で、私は忘れられない光景に何度も遭遇した。
やせ細った子どもたちが立ち並ぶ難民キャンプ。その脇を、冷房がガンガンに効いた真っ白でピカピカの国連のランドクルーザーが砂埃を巻き上げて走り抜けていく。
停まらない。子どもたちを見ることもない。その砂埃が子どもの顔に降りかかっても気にも留めない。
私たち取材班の車はむしろ正反対だった。ボロボロで、窓を開けていなければ息苦しくて仕方がない。だからこそ、あの光景を見たとき思った。
——この組織は、本当に現場の人々に寄り添っているのか?
食糧を満載したFAO(国連食糧農業機関)やWFP(国連世界食糧計画)のトラックが、難民キャンプの前をただ通り過ぎていく場面にも何度も遭遇した。
——あの食糧はいったいどこへ向かっているのか?
私は取材の過程で、日本から支援された物資が闇市で売られている光景にも出会った。小麦粉の袋には、国連のマークと「これは日本からの寄付です」という文章が印刷されていた。
国連が火の車になれば、平和維持や難民支援、疫病対策は確かに揺らぐ。だが、アフガンの砂埃の中で、私は別の現実を悟った。
国連の危機とは、財政の危機だけではない。理念と現場のあいだに横たわる“断絶”そのものが危機なのだ。
国連は世界の秩序を支える柱だと言われる。しかし、本当にその柱は、あの難民キャンプの子どもたちを支えているのか。
財政の数字以上に、彼らの姿こそが国連の“現在地”を映しているように思えてならない。
だからこそ今回、私は問いたい。
——国連は、本来の使命を果たしているのか。
その使命が、現場で本当に形になっているのか。
今回の財政危機は、単なる経済の問題ではない。
助けを必要とする最も弱い人たちに、国連という仕組みが本当に手を伸ばせているのか——。
その問いを、この機会にあらためて考え直すべきだ。
「BBC NEWS JAPAN」より


