【今日のタブチ】大河ドラマ『豊臣兄弟!』初回レビュー――小一郎の“言う力”VS「NO!」と言えないニッポン
ベネズエラに対するトランプ大統領の電撃的な軍事介入――そしてマドゥロ本人の“拘束”まで一気にやってのけた一連の作戦に、我が国ニッポンの首相は何を言ったのか。
確認できるのは、在留邦人の安全確保を最優先するという一般論と、米国との連携を強調する発言だ。だが、この“法の支配”や“主権尊重”の観点から見て重大な出来事に対して、賛否を明確に示した公式声明は見当たらない。つまり《ダンマリ》だ。私は、こういう局面こそ「それはいけない」とはっきり言えるかどうかが、国の求心力を決めると思っている。
今回の“作戦”は、2026年1月3日に実施され、米軍がベネズエラ各地を攻撃したうえでニコラス・マドゥロと妻シリア・フローレスを拘束して米国内で訴追した、と複数の国際メディアが報じている。トランプは「米国が当面ベネズエラを“運営”する」とまで発言し、国際法・主権の観点から各国が強い懸念を示すのは当然だろう。日本でも、首相は新年の所信で“改革”と“強い外交”を誓ったが、この件に関しては安全確保と慎重姿勢が前面に出た印象だ。ここに“言えないニッポン”の古い癖が顔を出している――そう感じるのは、私だけだろうか。
思い返せば、戦後の日本は米国の軍事行動に対して、いつも“配慮ある”対応に終始してきた。アメリカによる1983年のグレナダ侵攻や89年のパナマ侵攻では、日本は軍事的関与を避け、同盟維持を優先した。 そして決定的だったのは1991年の湾岸戦争だ。日本は総額130億ドルの資金拠出や地雷除去などで存在感を示したものの、 「チェックブック外交」と揶揄され、人的貢献の薄さが国際評価を下げた――この“湾岸トラウマ”は今も尾を引いている。 さらに2003年のイラク戦争では、小泉首相が米英の武力行使を支持し、国内外で強い批判を浴びた。 こうした対応の積み重ねが、“NO!”と言えない日本の体質を育ててきた。
こうした対応の背景には、戦後日本が“吉田ドクトリン”を基盤に、「軍事より経済」「アメリカとの同盟重視」という方針を続けてきたことがある。 この路線は、力を持つ代わりに“言わない・曖昧にする”文化を育て、法や原則に反する行為にもNOを言えない体質を固定化した。 だからこそ今、「NO!」と言えないニッポンが国際社会で求心力を失うのは目に見えている。
そんなタイミングで始まった大河ドラマ『豊臣兄弟!』が示すのは、まったく逆の“言う力”だ。初回からコミカルでテンポがよく、「漫才みたい」と評される掛け合いの裏で、弟・小一郎(豊臣秀長)は“常識の物差し”を手放さない。街道整備の現場で、利便性向上が敵の侵攻リスクを同時に高める、と平然と言う。兄・藤吉郎(豊臣秀吉)に媚びる姿に「恐ろしい」と言い切る。歯に衣着せぬ物言いで、場の空気より合理を優先する。この“はっきり言う”人物像に、私は新しさと今の時代における必要性を感じた。
視聴者の反応も、その“言う力”に呼応している。仲野太賀の小一郎に「巻き込まれ役が上手い」「視聴者の感情を代弁してくれる常識人」という評価が集まり、コミカルな掛け合いと緊迫したラストの落差に「笑顔から一瞬で青ざめる表情が凄い」と熱が入る。兄・藤吉郎の“笑顔が怖い”二面性、小栗旬のコミカルな信長の呼吸、テンポの良さに「大河の新時代」との声も出た。私の目には、登場人物たちが空気を読まずに、言うべきときに言う――その潔さへの共感が可視化されているように映った。
脚本の八津弘幸氏は『半沢直樹』で“権力への異議申し立て”を鮮やかに描いたが、今回も「弟視点」の新機軸で、常識と情理で“権力に挑む”姿を鮮明化している。初回のラスト、藤吉郎が人を斬る一瞬の冷徹さは、権力の“暗部”に正対するという物語の核を提示した。だからこそ、小一郎という“常識人”がはっきり口に出す。「ダメなものはダメ」「危険は危険」。この潔いロジックは、日本の“忖度文化”に風穴をあける。私は、百姓から成りあがるための“斬新さ”とは、まさにこの“言う力”だと思う。
ここで、現実の政治に視線を戻そう。
高市首相は就任後、新年の談話で“強い外交と安全保障”を掲げ、トランプとの電話協議や春の訪米調整も明らかにした。ベネズエラ情勢への言及は、在留邦人の安全確保と関係国との連携にとどまる。私は、ここにこそ“小一郎のような人物”が必要だと思う。主権侵害・国際法違反が疑われる行為に対して、同盟を大切にしながらも、原則論で「それはいけない」と言う。沈黙や曖昧さで凌ぐのではなく、“言葉の責任”を取る。それが、日本の外交安全保障のアップデートだ。
最後に、私がこの件で言いたいのは単純だ。国のリーダーは、勇気を持って“言う”べきだ。空気を読み、同盟に気を遣い、国内世論を慮る――それらは全部大事だ。だが、原則に反するものには「NO!」と言う。ドラマの小一郎のように、場の空気より論理で立つ。ニッポンが国際社会で求心力を取り戻す鍵は、そこにある。
「NHK番組公式HP」より



