【今日のタブチ】大谷選手を語るFBの「語り詐欺」~私のところにも女性の方から怪しい友達リクエストが…FBというプラットフォームが“騙されやすさ”を助長している理由とは?
米大リーグの大谷翔平選手になりすまして交流サイト(SNS)でやりとりし、高齢女性から現金100万円をだまし取ったとして、警視庁高輪署は24日、詐欺の疑いで、ネパール国籍の父親と息子を逮捕した。署によると、被害に遭った港区の80代女性は、大谷選手が日本でプレーしていた頃からの大ファンだという。SNSのフェイスブック(FB)で大谷選手をかたるアカウントとのやり取りが始まった後、ラインに誘導され「僕は世界一の人間だから高額な保険料がかかる。僕の保険料を払ってくれませんか」とのメッセージが届いた。女性は、エージェントを名乗って自宅を訪れた男に100万円を手渡した。
ファンであることを利用した悪質さは許せないものだが、一方で「そんなことで騙されるのか」と思う人もいるだろう。
だが、私はこの「FBを使用した」という手口が「騙されやすさ」を助長しているとみている。
それは、私も同じような経験をしているからだ。
FB上では大谷翔平選手のような著名人になりすました「語り詐欺(なりすまし詐欺)」が多数報告されている。これは、実在の人物や有名人の名前・写真・発言を悪用して信頼を得ようとする詐欺の一種だ。たとえば、以下のような手口が確認されている。
1.著名人の語り風広告:大谷選手や他の有名人が「投資で成功した」「特別な副業を紹介している」と語るような偽広告がFacebookに表示され、クリックすると詐欺サイトに誘導される。
2.偽ライブ配信:過去の映像を使って「今だけのチャンス」「コメントした人にプレゼント」などと呼びかけ、個人情報や金銭をだまし取る。
3.なりすましアカウント:有名人やその関係者を装ったアカウントが友達申請を送り、信頼させたうえで投資話や寄付を持ちかける。
このような「語り詐欺」は、感情に訴えるストーリー性と信頼できそうな人物像を武器にしているため、つい信じてしまう人も少なくない。
私のところによく来るFBの「語り詐欺」は、女性の方からのもので、だいたいが中国か韓国、台湾人の経営者やコンサルタント、学者や医者を名乗っている。そして必ず「独身」を強調している。学歴も申し分なく、どう見ても合成したような写真で、「友達登録」の欄を見ると何人か知った名前もある。思わず、「あの人も騙されたのか・・・」と苦笑する。
最近の友達リクエストは「Facebookでおすすめされたので知り合いかもと思いましたが 最近の趣味、マイブームは? 何か交流できたら嬉しいです」とか「田淵さん、こんにちは! 友達になってくれてうれしいです。投稿を見てとても興味があります。 これからもっと交流できることを願っています」というようなものだが、なかには「写真を拝見しました。素敵な方ですね」というのもある。そして必ず文章の最後には「星マーク」のキラキラがついているのが特徴だ。どう考えてもAIだろうし、私の写真を見て「素敵だ」なんて思うわけがないだろう。ましてやそんなすごいキャリアの女性が私と友達になりたいわけがない。大谷選手の例も、どう考えてもそんな普通の人に金の無心をするわけがないことは考えればわかるのだが、「妄信」を招いてしまうことが、この詐欺の怖いところだ。
FBというプラットフォームが詐欺の舞台として“特異”であり“騙されやすさ”を助長しているという点は、近年の研究や報道でも注目されている。では、FB詐欺の「特殊性」とは何か?それは大きく分けて4つある。
1.実名制による信頼性の錯覚
FBは他のSNSと異なり、実名・顔写真・職業・交友関係などが可視化されているため、「信頼できる空間」という印象を与えやすい。詐欺師はこの「信頼の錯覚」を逆手に取り、広告や投稿に著名人の名前や画像を使って信憑性を演出する。
2.ターゲティング広告の精度
FB広告はユーザーの年齢、興味、職業、地域などをもとに極めて精密なターゲティングが可能だ。詐欺グループはこの仕組みを利用して、例えば「中高年の投資関心層」などを狙い撃ちにする。
3.「友達がいいね!」の心理的効果
広告に「○○さんがいいね!しました」と表示されることで、“身近な人も信じている”という誤認が生まれ、警戒心が薄れる。これは「第三者効果」や「楽観バイアス」といった心理学的メカニズムとも関係している。
4.広告審査の抜け穴
詐欺広告は、最初は無害な内容で審査を通し、後から画像やリンク先を差し替えることで詐欺的内容に変化させる手口が確認されている。FBの審査体制の限界も、詐欺の温床となっている要因だ。
詐欺師は以上のようなSNSとしてのFBの特性を十分に研究し尽くしている。そんな詐欺と闘うためにも、私たちも知識を身につけていなければならない。
「Yahoo!ニュース」より