【今日のタブチ】小早川明子さん急逝――ストーカー対策の第一人者が教えてくれた“他者を理解すること”の意味
ストーカー問題に長年取り組んできたカウンセラーであり、NPO法人「ヒューマニティ」の元理事長の小早川明子さんが亡くなった。享年66だった。急な訃報でショックを受けている。先日亡くなった、テレ東時代の2期先輩に続いて、同年代の方の急な死に動揺している。
私は日本テレビのNNNドキュメントで「あなたは、なぜやったのですか?~増え続ける高齢初犯」(2013年12月放送)、「迷路の出口を求めてⅠ~ストーカーの心の奥底をのぞく」(2014年11月放送)、「迷路の出口を求めてⅡ~ストーカー最新治療70日間」(2014年12月放送)の3本にわたり、小早川さんにアドバイスを受けてきた。
特に、ストーカー加害者へのインタビューを通してストーカー問題に迫った「迷路の出口を求めて」では、ご本人にも密着し、画面にも登場してもらった。この作品は、優れたテレビ番組に贈られるギャラクシー賞奨励賞を受賞している。
その後も親交は続き、私が本学・桜美林大学に入職した翌年の2024年3月22日には、ハラスメントに関するFD講習会の講師もお願いした。このときもすでに、小早川さんは入退院を繰り返し、手術や治療を続けていた。
そして時々、おそらく病室からなのだろう、「最近、新聞とネットで田淵さんのコメントを読ませていただくことが多くなりました」と激励のメールを送ってくれていた。そこには「メディアとハラスメントの深刻な問題が自明になってきた今、教育という立場になられた田淵さんの存在意義はますます貴重になられました」と記されていた。
きっと、メールを打つのもしんどい状況だっただろうに、私がバッシングなど受けていないかと心配してくれたのだ。その気持ちが嬉しかった。
そして、昨年1月25日のメールには、以下のように綴られていた。
「私は治療が長々続き、体力との勝負みたいです。
後、一年、生ききることが今年の目標です!
頑張ります。」
小早川さんは、本当に“太陽のような人”だった。悔しくてならない。
私が取材で「ストーカー加害者と向き合わなければならない」精神的つらさで悩んでいると、温かく励ましてくれた。いつも相手の気持ちになって考え、自分のことなど二の次のような人だった。歳は4つしか離れていないが、私は早くして亡くなった母と面影を重ねていた。そういった意味では「姉」のような存在だったのかもしれない。
毎日連絡を頻繁に取り合うわけではないが、その存在があるだけで“生きる勇気”が湧いてくる。そんな人だった。残念でならない。無念でならない。
小早川さんが、ストーカー事案をはじめさまざまな人のカウンセリングを通して救った人は数限りない。まだまだ、社会に、そしてこんな殺伐とした世の中に必要な人だった。
特に小早川さんが力を入れていたのは、ストーカー加害者のカウンセリングだった。私が「なぜ加害者なのか」と聞いたときに、小早川さんは言った。
「加害者の人の罪は許せないけど、加害者の人もある意味“被害者”なんですよ」
そして、自身がストーカー被害者であったことや、実はあるとき自分も加害者になってしまっていたことを告白してくれた。
「今日の被害者は明日の加害者」
その言葉に、減る気配のないストーカー事案への解決の糸口があると思えてならない。
最後に、私が旧ジャニーズ事務所性加害問題でNHKに出演したときに、小早川さんから送られてきたメールを紹介して、心から冥福を祈りながら終わりたい。小早川さんの人柄がよくわかる文章だ。
拝見しました。
田淵さん、良く話してくださいましたね。
感謝の気持ちになりました。
私は1980年代に北公次の光源氏へという暴露本を読んだとき、ショックで茫然としました。
しかし、一番ショックだったのはこの本が芸能、マスコミ、政治から無視されたことでした。
でも、私だって知ったのに何もしないでいるじゃないかと、自分を恥じて他を批判できるわけではなく、しょせん世の中はこんなものかと絶望して目を閉じたのです。
だから、この度の騒ぎは、おそすぎてはいますが一つの光でした。
しかし、今回の騒ぎの中でも田淵さんのような正直な反省を述べる人がいなくて、つまり、知っていたのに無視したことを謝罪しないことには絶望しかありませんでした。
知らなかったとか、薄々知っていたが男性被害者に対する認識が低かったとか、言い訳ばかりです。
そんなはずはありません。
20代だった私でさえ、事の大きさは認識できていました。
それを見捨てたことの罪は自覚していました。
だから、田淵さん、本当にありがとうございます。
本当の反省は自らを本当に批判するところからしか生まれないものですから。
良くなるには絶対に必要なんですから。
小早川明子
NNNドキュメント
「迷路の出口を求めてⅠ~ストーカーの心の奥底をのぞく」より
ⓒNTV


