【今日のタブチ】我が国の売春防止法・見直しは“待ったなし”――処罰するべきは「売る側」か「買う側」か?

東京新聞の一面に、売春防止法の見直し議論が取り上げられていた。読んでいて思わず唸った。自分が知らないことがまだまだあると気づかされ、改めて考えるきっかけになったからだ。

記事によれば、性売買をめぐる各国の制度は実にさまざまだ。スウェーデンやフランスでは買う側だけを処罰し、売る側は「被害者」と位置づけて支援の対象になっているという。いわゆる北欧モデルと呼ばれる考え方で、性売買の原因を“買う男性の需要”にあると見なす仕組みだ。
一方、アメリカのNY州では買う側も売る側も処罰する。ドイツやオランダは双方とも処罰しない“規制モデル”で、性産業を合法的な労働として管理する方向に進んでいる。

そして驚いたのは、韓国の例だった。
韓国では2004年に「性売買防止法」が成立し、買う側と斡旋業者を処罰する一方で、売る側の女性たちを支援する制度が整備されている。しかもその支援は、生活費、住宅、職業訓練、医療、法律相談まで含む、かなり包括的なものだという。
坡州(パジュ)市では、性売買から抜け出す意思が確認された場合、最大3年間で総額7,000万ウォン超の支援を受けられる制度まである。生活基盤を整え、再び性売買に戻らないための土台づくりを徹底している。

では、なぜ韓国はここまで「売る側の支援」を重視するのか。
背景には、性売買を「女性の人権侵害」と捉える大きな転換があった
2000年と2002年に群山で起きた「監禁状態の女性たちが火災で死亡した事件」が社会に衝撃を与え、女性運動が「構造的な搾取」として性売買を定義し直した売る側の女性は“選んでそうしている”のではなく、貧困、借金、暴力、孤立といった背景に追い詰められた“被害者”であるという認識だ。
この認識は、売る側への支援が「本人のため」というだけではなく、社会全体にとっても意味をもつということを示している。

第一に、支援がなければ、多くの女性は再び搾取の現場に戻らざるを得ない。生活の安定、働き口、住まいがなければ、人身取引や中間搾取の構造から抜け出すことは難しい。だからこそ韓国は、生活費や職業訓練を含む“出口支援”を制度化した。
これは再搾取の連鎖を断ち切る効果があり、長期的には社会問題の縮小につながる。
第二に、買う側を処罰し、売る側を保護することで、市場そのものが縮小する。需要が減ることは、搾取の場を減らすことにつながる。北欧モデルと共通する発想だ。
そして第三に、売る側を罰しないことで、暴力や搾取の被害が表に出やすくなる。処罰される恐怖がなくなることで、相談や通報につながりやすくなる。結果として、中間搾取や人身売買の摘発がしやすくなり、社会全体の安全にも寄与する

しかし、気になる点が一つある。
それは「売らせる者」、つまり斡旋業者や搾取する側への対処だ。これを曖昧にしては制度は成り立たない。韓国の場合、斡旋者や業者は最も厳しい処罰の対象になっている。建物の提供者、金融業者、さらには2026年以降はオンラインで斡旋するサイト運営者まで重い刑罰が科されている。
この「売らせる側」こそ搾取の根源であり、ここを断たない限り、売る側への支援だけでは構造は変わらない。

こうして各国の制度を比べてみると、「売る側への支援」は単なる福祉政策ではなく、性搾取の構造を減らすための戦略的アプローチであることが見えてくる。
売る側を罰し続けても、問題は地下化し、暴力と搾取の闇はより深くなる。だが、支援を通じて当事者が搾取の場から抜け出す力を持てば、性売買の構造そのものが弱まっていく。
同時に、売らせる側を厳しく取り締まることで、その構造の根本を断つことができる。
つまり「売る側支援」と「売らせる側処罰」はセットで考えるべきもので、その両輪が揃って初めて社会的意義を持つ

日本でも売春防止法の議論が進む今、こうした他国の取り組みは示唆に富んでいる。
売る側をどう見るのか、売らせる側をどう断つのか。
そして、性売買が生まれる背景にある社会構造そのものにどう向き合うのか。
今回の東京新聞の記事は、その問いを突きつける内容だったと思う。

「YAHOO!ニュース」より

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