【今日のタブチ】本学・桜美林大学の「私大志願者数」が前年比187%で「増加率NO.1」を獲得した〝納得の〟理由
大学の人気は、社会の流れや時代の要請、高校生の興味などによってうつろうが、最もわかりやすいバロメーターが毎年「大学通信」が発表している私大の「志願者数ランキング」だ。
ランキング上位の大学を見ると、3位明治大から12位立教大までは昨年と順位が変わらず、安定した人気を誇っている。関東圏、関西圏の難関大学に志願者が集中する傾向に変化はなく、早慶上理(早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大)全体での志願者数は昨年比6.4%増、関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)は5.0%増、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)は7.0%増と、全てのグループで昨年より増加しており、それら常連校の人気は一層高まっている。
そのなかにあって、2025年度入試において着目するべき点が大きく2つある。
1.11年連続で首位を堅持してきた近畿大を、千葉工業大が追い抜き、全国1位の座を獲得した
千葉工業大は、1学科分の検定料で複数学科の併願を可能にするのをはじめ、コロナ禍における共通テスト利用入試の検定料を無料にするなど、次々と受験生の経済的負担軽減策をうちだしてきた。受験生に寄り添った入試改革を継続してきたことが、今回の結果に結びついたようだ。
2.本学・桜美林大学が志願者数で前年比187%となり、私立大学の中で最も増加した
本学は、ランキングにおいては29位であるものの、驚異的な増加率を誇っている。増加率が100%を超えたのは、ランキング39位の東京工科大学(前年比101.8%)のみである。
では、なぜこんなに本学は志願者数を増やすことができたのか。それは以下の5つの要因があると私は分析している。
1.入試方式の拡充
本学は近年、多様な入試方式を導入し、受験生の選択肢を広げている。特に、共通テスト利用入試や総合型選抜の枠を拡大したことが、志願者数の増加につながった可能性がある。
2.実践的な学びを重視したプログラム
本学は「実践的な学び」をモットーにしている。特に、私が所属する芸術文化学群では、「初学者教育」に力を入れている。映像をはじめとして演劇・ダンス、音楽、ファインアート、造形、デザイン、グラフィックなどさまざまな芸術分野を網羅し、初めてその分野に触れる学生でもスムーズに学びを始められるような豊富なカリキュラムを組んでいる。これらはとても好評で、人気が高い。
3.アクセスとキャンパス環境の良さ
本学のキャンパスは、町田の本拠地をはじめとして、新宿、八王子などアクセスが比較的良く、通学の利便性が高い。芸術文化学群のキャンパス「東京ひなたやまキャンパス」は、環境もよく設備も充実している。自慢ではないが、美術館やアトリエのような雰囲気がある。オープンキャンパスに来てくれた生徒さんのなかには、このキャンパスに憧れて入学を希望してくれる方も多い。
3.大学の広報活動の強化
SNSやオープンキャンパスの活用を通じて、大学の魅力を積極的に発信していることが、志願者数の増加に寄与していると考えられる。これはとても大きい。特に学長の畑山浩昭先生の情報発信力は半端がない。XなどのSNSを毎日のように更新し、在学生にメッセージや激励を送るなど、とてもこまめな対応は頭が下がる思いだ。それが受験生向けの情報発信につながり、志願者の関心を引きやすくなっていると考えている。畑山学長のX☛https://x.com/h_hatayama
4.学費や奨学金制度の充実
本学の学費の負担を軽減するための奨学金制度の拡充が、受験生にとって魅力的な要素となった可能性が高い。こういった経済的な支援策はこれからの時代においてとても大切な要素であると考える。
5.「学群併願割引」の導入
本学では「学群併願割引」を導入しており、同じ試験日であれば併願数に関わらず一律35,000円の受験料で複数の学群に出願できる制度を設けている。この制度によって、受験生は複数の学群を効率的に併願できるため、志願者数の増加につながったと考えられます。そのほかにも、「2科目パック」や「共テプラス」など、受験生の負担を軽減しつつ合格の可能性を広げる仕組みも導入されている。これらが志願者数の増加に寄与した可能性は大きい。これらの施策は、すべて入学部の職員が考え出したものだ。その“受験生に寄り添った”発想は称賛に値する。本来、大学経営的に考えれば、入試関連の収入を確保したいところだろう。経営陣の英断は素晴らしい。
以上に述べたような要因が複合的に作用し、本学の志願者数が大幅に増加したと言えるだろう。
少子化が進む中、多くの大学にとって「受験生に寄り添った、受験しやすい環境」の整備が、今後ますます重要になってくるのではないだろうか。
「日刊ゲンダイDIGITAL」より