【今日のタブチ】東京都が広報動画に“5億円超”を投入――その効果、見えてますか?
東京都が2024年度に政策や制度の広報のために公開した動画の制作費が、東京新聞の調べで5億2千万円以上に上ったという報道があった。数字だけを見ると驚くが、動画で政策を伝えること自体は悪い取り組みではない。むしろ、行政がわかりやすさを重視し、映像を使うのは時代の流れだ。
ただ、今回の動画には特徴がある。特に産業労働局が制作した「東京産食材トリビアの旅」は制作費が高く、農業素材の魅力を伝える内容になっている。一方、豊洲市場を舞台にした“親子で学ぶお魚克服レシピ”(笠原将弘シェフ出演)、お笑い芸人・有野晋哉氏登場の「東京よゐ食」シリーズ、さらには気候変動対策部による“木下ゆーきが行く『燃費のいい家』”など、芸能人や専門家の出演も目立つ。こうした演出は話題性を狙ったもので、「税金でタレントを使う必要があるのか」という批判が出やすい構造だ。
一方、大学との産学連携やコラボ映像が含まれている可能性がある点は、こうした取り組みを評価する上で重要なポイントだ。「東京動画」内には大学発案のメディア活用や政策企画提案を基にしたコンテンツが散在していそうだ。たとえば、令和7年度の「東京都と大学との共同事業」において採択された「政策広報に関する大学提案枠」を通じ、動画の企画・評価設計に大学が関与する事案が複数存在する。学術的知見を行政広報に活かす試みとして、産学双方の強みを結び付ける重要な取り組みと言える。
ちなみに、各局が手掛ける動画には「豊洲市場での料理レシピ」や「若者向け健康支援」「都政ショートドラマ」など多様なジャンルがある。こうした幅広いコンテンツも含めて、個別動画の効果(再生数・視聴完了率・満足度など)を公開すべきだ。
問題は、効果が見えていないことだ。私がテレビ業界にいた頃、番組を放送すれば視聴率で評価し、定期的に満足度調査を行った。ところが、東京都の広報動画については、どれだけの人が視聴し、どれだけ理解が深まったのかという報告が都民に十分に示されていない。5億円もの税金を使いながら、成果が不透明なのは納得しがたい。
もちろん、都は広報全体について世論調査を実施している。しかし、動画単位での効果測定――再生回数、視聴完了率、満足度、政策理解度など――を体系的に公表している資料は見当たらない。これでは、費用対効果を判断する材料がない。
どうすればいいのか。私は次のような改善を提案する。
視聴データを定期的に公表する。動画ごとの再生回数や視聴完了率を公開し、都民が確認できるようにする。
満足度や理解度の調査を導入する。動画視聴者を対象に、政策理解度や満足度を測る簡易アンケートを実施する。
そして、定期報告書を発行する。「広報動画効果報告書」を年次でまとめ、予算、視聴状況、都民の声を公開する。
そして特に以下の点は、私が強調したい部分だ。
産学連携の成果を見える化する。大学と共同制作した動画があるなら、その目的や効果を明示し、研究的な評価も取り入れる。大学との協働は大変なアピールになる。次世代の若者たちの意見や声を取り入れることの意義は大きいし、都民の賛同や共感も得やすいだろう。
こうした仕組みを整えれば、都民は税金がどう使われ、どんな成果を生んだのかを納得できる。広報動画の強化自体は悪くない。むしろ必要だ。しかし、説明責任と透明性が伴わなければ信頼は得られない。
テレビの世界で当たり前だった「放送後の評価」を行政広報にも導入する。いかがだろうか?
「東京新聞デジタル」より



