【今日のタブチ】江戸川区職員「237人一斉処分」という《異常事態》――なぜ起きた?区長の説明責任は?

江戸川区職員191人が処分された。退職者を含めれば237人にのぼる。
その数字に驚いた。あまりにも異常だと感じた。江戸川区の職員総数は約3,400人。そのうち237人が処分対象というのは、実に7%にあたる。10人に1人以上が懲戒処分を受けるという事態は、国内の自治体ではほとんど前例がない。過去の大規模事例でも数十人規模が限界であり、海外の自治体でもここまでの例は極めて稀だ。つまり、この数字は異常値と断言できる。
しかも、背景にあるのは、道路補修や公園整備などの公共工事で、契約を細かく分割し、随意契約で業者を選定するという不適切な発注だ。2019年度から2023年度までの5年間で、契約総数8439件のうち1123件が不適切な分割発注だったという。これは一部の職員の過失ではなく、組織的な慣行としか言いようがない。

なぜこうなったのか。
区の説明では「スピード優先」が常態化していたという。しかし、スピードを理由に公正性を犠牲にするのは行政の本質を見失っている証拠だ。幹部や係長級まで関与していた事実は、単なる現場の判断ミスではなく、組織文化の問題を示している。公正な契約手続きを軽視し、効率を名目に不透明な発注を繰り返す――こうした体質が長年放置されてきたことが、今回の異常な事態を生んだ。
そんなことはないと信じたいが、癒着や裏金、違法発注があったのではないかと疑ってしまう。

さらに看過できないのは、今回の対応が「処分」という発表だけで幕引きを図ろうとしている点だ。説明責任を果たさず、改善策の具体性も示さないまま、トカゲの尻尾切りで事の収拾を図る――こうしたやり方を続ける限り、同じ問題は必ず繰り返される。処分は当然だ。しかし、それだけでは何も変わらない。むしろ「処分したから終わり」という姿勢が、再発の温床になる。

区民や国民に対して、何をどう改善するのかを明確に示すこと。それがなければ、今回の処分は単なる数字の羅列に過ぎない。外部監視の強化、ガイドラインの徹底、情報公開の透明性――これらを本気で実行しなければ、行政への信頼は回復しない。そのためには、契約データの公開や第三者委員会による検証を、形式だけでなく実効性ある仕組みにすることが不可欠だ。これを実現するためには、強いリーダーシップが求められる。今こそ問われているのは、区の覚悟である。特に、区長の覚悟や方針・決断は耳目を集める。

今年1月30日に斉藤区長は臨時記者会見を開き、分割発注問題の調査結果と謝罪を表明した。しかし、それは問題発覚後、3か月も経ってからのことだ。不適切な契約は1,000件以上にのぼると公表されたが、その会見では具体的な改善策や実施スケジュールがほとんど示されなかった。
さらに違和感を覚えるのは、その後の対応だ。
1月30日以降、区長から追加の説明もないまま、今回職員237人の一斉処分というニュースだけが流れた。この沈黙は、逃げているのか、時間稼ぎなのか――そう疑わざるを得ないし、責任回避と受け取られても仕方がない。また、処分発表で幕引きを図る「トカゲの尻尾切り」に見えてしまうのだ。
区民や国民の信頼を取り戻すには、実効性ある改革と期限を明示した行動計画が不可欠だ。今回の問題は、単なる不祥事ではない。行政の根幹に関わる「公正性」という価値が軽視され、組織文化として定着していたことが最大の問題だ。処分という数字で幕引きを図ろうとする姿勢は、区民を愚弄しているに等しい。
こうしたやり方を続ける限り、同じ問題は必ず繰り返される――そう、断言せざるを得ない。
区民への説明責任の猶予はもうない。

「TOKYO MXニュース」より

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