【今日のタブチ】淵野辺駅から消える『銀河鉄道999』――編曲を手がけたのは桜美林大学の教授だった
JR東日本のダイヤ改正に伴う運賃値上げに悲鳴を上げている人も多いことだろう。そんなざわつきのなかで、もうひとつ“胸に刺さる”JR関連のニュースがあった。
本学・桜美林大学町田キャンパス、そして淵野辺プラネットキャンパスの最寄り駅である淵野辺。ここはJAXA(宇宙航空研究開発機構)相模原キャンパスの最寄り駅でもあり、「宇宙の街」として親しまれてきた。その象徴として、2014年から発車メロディーにはアニメ『銀河鉄道999』のテーマ曲が使われてきた。だが、今日から始まった横浜線のワンマン運転化に伴い、駅独自のメロディーは廃止され、共通の発車音へと切り替わることになった。
寂しい話だ。
初めて淵野辺駅を訪れたとき、「なぜこの駅でスリーナインが流れるのか?」と不思議に思った記憶がある。理由を知れば納得で、この駅が宇宙科学研究の中心であるJAXAの最寄りであることから、“宇宙に一番近い街”を象徴する選曲だった。そしてこのメロディーには、もうひとつ本学との深い縁がある。なんと、わが芸術文化学群音楽専修の松岡邦忠教授が編曲を担当していたのだ。
意外と知られていない事実で、私は「もっと宣伝したらいいのにな」と思っていた。そんな中で舞い込んだ“廃止”のニュース……本当に残念でならない。
そして、こういう時の“奇妙な符合”には、いつも心がざわつく。ちょうど3月3日、メーテルの声を担当していた池田昌子氏が亡くなられた。池田氏といえばメリル・ストリープやオードリー・ヘプバーンの吹き替えでも知られるが、私にとっては何よりも“永遠の憧れの人”メーテルそのものだった。
私の世代にとって『銀河鉄道999』は特別だ。放送当時、私は中学生。テレビ番組『NTV紅白歌のベストテン』でゴダイゴが『銀河鉄道999』を歌う姿を、食い入るように見つめていた。アニメの中のメーテルをセロハン紙に写し取り、教科書の間にそっと忍ばせて学校へ持って行った。あの頃の“憧れのお姉さん”像は、数々の淡い思い出とともに、今も心の奥底にそのまま残っている。
インターネットもSNSも配信もない時代。そんな不便さのなかで、少年少女だった私たちの胸に強い光を灯してくれたのが『銀河鉄道999』であり、そのメロディーであり、キャラクターたちだった。
そして今、またひとつ「青春のかけら」が静かに姿を消す。淵野辺駅から『銀河鉄道999』のメロディーが消えるという事実は、私にひとつの時代の終焉を突きつけた。
耳に触れられなくなること以上に、あのメロディーが背負っていた“世代の記憶”がふっと空気中に溶けていくような、そんな寂しさがある。
それでも今日、あのプラットホームに立つと、過ぎ去った時間の向こうにメーテルの横顔が確かに浮かび上がる。
“さようなら”ではなく、“行ってきます”。
あの頃の私たちは、そう言われながら未来へ送り出されていたのだ。
鉄郎がアンドロメダ大星雲を目指したのは、機械の身体を得るためだった。
けれど、今になって思う。
私たちが本当に欲しかったのは、あの列車に乗り込む勇気と、見知らぬ世界へ向かう胸の高鳴りだったのではないか、と。
淵野辺駅から発つ若者たちも、あのメロディーを耳にしながら、自分だけの“旅の始発駅”に立っていたのだと思うと、なんと素晴らしいことではないだろうか。
メロディーそのものは消えてしまっても、その音が背中を押した感覚だけは、これからも誰かの未来の中に生き続けることだろう。
「変わりゆく町田の街並み」HPより ImageFilter v6.3ÿ


