【今日のタブチ】生産者のことを考えない〝不届きな〟政府の「農業政策」~作り手を守らないこの国の行く末を憂う~英伸三氏の写真『乳価闘争』が浮き彫りにする事実とは?

今朝の新聞には、写真家・英伸三氏の『乳価闘争』という作品が紹介されていた。乳業メーカーに乳価を低く抑えられていることに酪農民が怒り、その朝搾ったばかりの牛乳を大量に千曲川に投棄するという抗議活動を撮ったものだ。畜産農家にとって牛乳は何物にも代えがたく大切なものだろう。それを川に流すというのだから、よほどの理由があるに違いない。
捨て身の抗議には理由があった。国は酪農の振興を掲げ、近代化のための資金を低利で貸し付けた。一方で米国から求められるままに脱脂粉乳を大量輸入し、給食に出すなどしたため、牛乳の需要が減少した。そのため乳価を低く抑えられ、酪農民の経営や生活が立ち行かなくなったのだ。当時は、毎年およそ1万戸が廃業するという事態だったという。
ひどい話だ。「酪農振興」と言いながら、酪農民を守らない国。このありさまは、いまの「平成の米騒動」に通底する
それらの共通点は3つある。
1.農業政策の失敗・・・畜産業においては、飼料価格の高騰や生産調整の失敗が業界全体に負担をかけるとされ、農業政策の一環としての畜産施策が十分に機能していない可能性がある。同様に、米政策においては減反政策の影響が米不足の根本原因の一つとされており、政府の生産管理が市場の需給バランスを崩したとの指摘がある。
2.調整や対応の遅れ・・・畜産業における市場調整の遅れ補助金政策の不備は、米政策の転換による備蓄米放出の遅れで価格高騰と供給不足が深刻化し、地域の米穀店が経営難に陥る事態が発生していることと似通っている。
3.不適切な政府の介入・・・畜産業では、輸入飼料への依存や国内生産の維持が課題となっており、不適切な政府の介入が市場の混乱を招く可能性がある。同様に、農業政策全体の方向性として、市場の自由化政府の介入のバランスが問われている。
いずれにしても「生産者」をないがしろにし過ぎている。そんな国の未来が明るいはずがない。

英伸三『乳価闘争』
「東京新聞TOKYOWeb」より

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