【今日のタブチ】神奈川県警「交通違反2716件」虚偽疑いの衝撃――その“不自然すぎる”件数と原因に覚えた決定的な違和感

神奈川県警で、交通違反の処理が2716件も取り消されるという前代未聞の事態が起きた。理由は、交通反則切符や実況見分調書に虚偽の内容が記載されていたからだという。対象は第2交通機動隊の小隊所属の7人。速度超過などの取り締まりで、パトカーの追尾距離を実際より長く偽装したり、現場に行かず地図や過去図面を流用して調書を作ったりしていたと報じられている。
県警は反則金約3400万円(報道によっては約3500万円)を返還し、主導した40代の巡査部長は懲戒免職、計24人が処分されたという(退職者含む)。期間は2022〜2024年の約2年半。ここまで規模が大きいと、“個人の逸脱”の域を明らかに超えている。

若い頃、スピード違反で警官に停められて「見逃してください!」と懇願したことがある。もちろん、それは私の未熟で、法の下に処理されるのが筋だ。ただ、当時から抱いていた違和感は忘れられない。違反かどうかを、ほぼ警官の言い分だけで決められてしまう構造への不服だ。
かつての速度取締りは、パトカーが後方から一定距離・一定時間、速度計を安定させて追尾して“計測”するのが一般的だった。目視で二点の差分を取るという説明は公的資料で裏づけが取りにくいが、追尾式という方法自体は今も各地で続いている。
一方で、近年はレーザー式(LIDAR)の測定器が固定・可搬式として普及しつつある。しかし、追尾式が残っている限り、結局は「測った」と書面で主張しうる余地が残り、今回のように、“書類だけ整えれば通る”という不正が入り込む隙は消えない。ここが構造的な弱点だ。

今回の報道で、私が最も引っかかったのは、動機の部分だ。
主導した巡査部長は「一件でも多く取り締まりたかった」と述べているという。この言葉は、件数を上げることが評価や自己目的化していた可能性を示す。しかも小隊内部では、経験豊富な巡査部長に対して意見が言いづらい雰囲気があったとされる。つまり、現場組織の中でブレーキが利きにくい空気ができていた。成果主義と同調圧力が組み合わされば、不正は加速度的に“常態化”する

ここで、どうしても観ておかなければならない視点がある。
これだけの数の虚偽を、7名だけしか知らなかったのかという疑念だ。2年半にわたり2716件――この規模の不正が、現場の最小単位で自給自足のように回り続け、上司も点検者も誰も気づかなかったとする説明は、率直にいって現実味が薄い。捜査書類は通常、系統的な点検や上申のプロセスを通る。今回、警察庁は再発防止策として捜査書類を点検する「巡回指導官チーム」を新設し、交通機動隊や警察署を巡回して作成状況を点検するという。もしこれが本当に“初めて必要になった仕組み”なのだとすれば、逆にいえば、これまでの点検の目は甘かった、あるいは現場での「書面主義」を鵜呑みにしてきた、という自白に等しい。組織的な隠蔽と断じる材料は今のところ報道ベースでは出ていないにせよ、「知らなかった」で通すには無理がある。少なくとも、組織的に見逃される構造 があったのではないか――ここは検証されるべき核心だ。

被害は金銭にとどまらない。2716件もの取消しは、市民に「また虚偽が生まれるのではないか」という疑念を植えつける。現場の警官は、市民からの不信と反発、時に暴言に晒され、取り締まりに躊躇が生まれる。結果として、重大事故の芽を摘むチャンスが減り、社会全体の安全が削られる。交通取り締まりは本来、命を守るためのものだ。不正は、取り締まりの正統性そのものを腐食させ、巡り巡って交通安全を危うくする“負の外部性”を生む

では、何が必要か。
結論は明快だ。可視化根拠提示の義務化である。追尾式を続けるなら、計測値だけでなく、映像+測定ログ+位置データのセットで提示し、市民側もその検証にアクセスできるようにする。固定・可搬式のレーザー測定でも、機器の校正履歴、設置位置、照射条件を開示し、争いが生じた場合は独立機関が迅速に検証できる体制を用意する。
逆にいえば、「警官の見立て」と「書類の整合」だけで違反を確定できる仕組みは、もはや時代に合致しない。今回の件で、県警自身がドライブレコーダー映像を点検し、明確に確認できない事案の多くを取り消したという事実は、データのない取締りは立たないことの証しだ。

最後に二つの警鐘を鳴らすことで、今日のブログを締めたい。

1.この国の交通安全は、技術的には前に進んでいるのに、運用は昭和のまま止まっている。“取り締まりの正義”を守れなければ、“命を守る正義”も守れない。今回の虚偽2716件は、制度の改修を迫る最後通牒だ。
2.市民が警官を疑い、警官が市民を警戒する――そんな社会は危険だ。不正が作った溝は、不正では埋まらない。透明性だけが、唯一の橋になる。

神奈川県警は生まれ変われるのか……その行方を注視したい。

「Yahoo!ニュース」より

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