【今日のタブチ】NHKスペシャル『死亡退院 精神医療・闇の記録』を見た~私がドキュメンタリー撮影の際に実感していた「事実」とは何か?
12月14日に放送したNHKスペシャル『死亡退院 精神医療・闇の記録』を録画していたが、やっと見ることができた。以下は、NHKオンデマンドに掲載されている概要である。https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2024142700SA000/index.html
「ぼくを助けて下さい…」虐待事件が発覚し、看護師ら5人が逮捕・略式起訴となった東京・八王子の滝山病院。病院で何があったのか? 12人のカルテを独自に分析すると、重度の褥瘡や心筋梗塞が高い確率で発生していた。“死亡退院”率はおよそ8割。取材で見えてきたのは「医療の闇」、そして引き受け手のいない患者をめぐる社会の現実だった…戦後からの負の歴史も紐解き、精神医療の奥底に潜む構造的問題に、3年の取材で迫る。
なかなかハードだが、見ごたえのある作品だった。もともとこの取材チームはETV特集で2023年6月に『ルポ 死亡退院 精神医療・闇の実態』という番組を放送している。今回の放送はその続編という位置づけだ。私も過去に、連合赤軍兵士やストーカー加害者、高齢初犯者、少年犯罪の加害者などいろいろな取材に難航し、3年や4年もかかったことがあるだけにその苦労はしのばれる。
語りの髙橋美鈴氏が素晴らしかった。客観的でありながら突き放したところがなく、じんわりと染み入ってくるような語り口にかえって、事実の恐ろしさをひしひしと感じることができた。
そして何よりも、取材班が日本の精神医療の実態にも言及したことを評価したい。滝山病院のようなとんでもない病院でも、重篤な患者を受け入れてくれるようなケースにおいては厚生労働省も強くは言わないというような事実を明かしたナレーションは、私が昔、NNNドキュメントで発達障害を抱える子どもたちの取材をおこなっていたときのことを思い起こさせるものだった。
その取材の際にある児童精神科医は、「日本の精神医療は薬漬けで腐っている」と言っていた。精神疾患や発達障害などの精神障害というと「薬を大量に投与して」なんとかしようとするのだという。
それはあまりにも恐ろしい証言で、私は放送するのを躊躇してしまったが、今回の放送ではそういったことにも、しっかりと踏み込んでいた。
それにしても、滝山病院の朝倉重延元院長の発言は同じ人間とは思えない耳を疑うようなものだった。いまは医療から身を引いているが、将来はわからないというようなことを言っていた。
こういう医者には戻ってきてほしくないと思うのは、私だけだろうか。声をあげないと、次の犠牲者は自分の大切な人かもしれない。
「NHK公式番組HP」より