【今日の新聞から】テレビメディアの敗北を示した、斎藤氏の兵庫知事再選結果~SNSに負けたエポックメイキングな出来事

またか・・・。
そんな印象だ。トランプ氏の大統領選の際にも、どう見てもトランプ氏が圧勝なのに、「接戦」と報じるテレビの様子を見た視聴者からは「テレビの凋落」と揶揄され、「マスコミの『通夜状態』、単なるトランプ支持の逆張りか、それとも偏向報道のツケ?」など、大統領選をめぐるテレビへの不信感をあらわにする投稿が相次いだ。

そしてさらに、昨日の兵庫県都知事選においても、テレビを中心としたマスメディアはSNSの後手に回った。というより、完全にSNSに負けたと言っていいだろう。
友人の一人は私に「エポックメイキングな出来事」と連絡をしてきた。今回のことで、完全に「マスメディアは信頼できない」ということが世間にバレたかたちとなったからだ。
SNSでは「斎藤氏ははめられて辞めさせられた」などといった陰謀論まがいの話も出回った。そんななか、大衆は選挙期間中も多くの情報を求め続けていた。その一方で、テレビの報道番組は、パワハラ問題を検証したり、百条委員会の見解を紹介するなど、すでに視聴者が知っている「過去情報」しか流せなかった。いわゆる「終わったこと」を焼き直しているだけで、それはいまの情報化社会、スピード化の時代において視聴者が求めるものではない。
テレビは「知事選告示後はあまり踏み込んだ報道を控えるべき」といった過去の慣習にとらわれ、また「一方的な批判になってしまうんでは」と恐れるあまり、自己規制をおこなってしまったと指摘せざるを得ない。そしてそのことが結果的に、「テレビをはじめとするマスコミの情報は正しくないのでは?」「すべてを伝えていないのでは?」という「マスコミ不信」を増長させてしまった。
しかも、今回でトランプ報道に続いて2度目だ。

一般視聴者は日々、多くの情報に触れている。メディア人が考えるより格段にリテラシー能力も高いと認識するべきだろう。だが、そんなふうに大衆のメディアリテラシーが高まったにも関わらず、メディアが追いついていない。それはなぜか。
この点については、また別の機会に詳しく論考してみたい。
私がテレビ局在職中に、よく聞く言葉があった。「視聴者にわかりやすく」である。
「これでは視聴者が理解できない」「難しすぎる」と言われ、何でもかんでも「わかりやすくしろ」と言われていた。それではあまりにも視聴者を馬鹿にし過ぎだろう。テレビとはそういったように、「大衆を下に見る」風潮がある。視聴者はテレビ人が思っている以上に、よく理解している。

私が「情けないなぁ」と思っていたことがある。いつのころからか、テレビのニュース番組やワイドショーなどは週刊誌の後追いをするようになったことだ。「週刊〇〇によりますと……」のような自分の脚で稼がないどころか裏も取らない「コタツ記事」のような報道が多くなった気がしている。

テレビは原点に戻って、「批判的な視点」でより「踏み込んだ」情報を提供してゆくことが求められる。

「朝日新聞デジタル」より

【今日の新聞から】テレビメディアの敗北を示した、斎藤氏の兵庫知事再選結果~SNSに負けたエポックメイキングな出来事” に対して2件のコメントがあります。

  1. あらい しおみ より:

    いつも興味深く読ませて頂いております。
    兵庫県知事選の結果については、私は、単なるマスメディア対SNSという対立構造ではないと思っています。
    以前より大阪を中心に、TV等は維新に支配されている状態です。選挙期間前から斎藤候補に有利な報道に偏向し、意図的に印象操作に加担していたと思われます。その上でのSNSや動画でのブームなのではないでしょうか。
    都知事選の小池氏や石丸氏、衆院選の国民民主党にも、同じような選挙プロデュースを感じました。
    単純な情報ツールの問題ではなく、マスコミにおいて『政治問題を視聴者=国民にどう伝えるべきか』だと思うのですが、田淵さんはどうお考えになりますか。(もちろん他にも様々な問題がありますが…)

    1. 田淵 俊彦 より:

      あらいしおみ様 コメントありがとうございます!鋭い考察ですね。仰る通り「兵庫県知事選の結果については」単なるマスメディア対SNSという対立構造が理由ではないと思います。政治の駆け引きやパワーゲームも絡んでのことだと思いますが、今回の知事選で圧倒的に国民が情報ツールとして使っていたのがSNSだという意味において、プレゼンスという点で「完全にテレビは負け」ていると感じています。いまやテレビは「メディアではあるが、マスメディアではない」という前々から皆が思っていたことを、明らかにしたことが今回の選挙戦だと、だからエポックメイキングだと考えています。貴重なご意見、とても参考になりました。これからもご支援をよろしくお願いいたします!
      田淵俊彦 拝

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