【今日の新聞から】三菱重工爆破事件指名手配犯の「最期は本名で迎えたい」というエゴ

今朝はこの話題を記したい。
三菱重工爆破事件をはじめとした連続企業爆破事件の指名手配犯が名乗り出たという。連続企業爆破事件は「帝国主義」を批判する「東アジア反日武装戦線」、別名「狼」による無差別爆弾テロである。私はどんな主義・主張があろうとも、テロなどの無差別に他者を攻撃する手段を認めないし、許さない。
しかし、今日はこの事件の実行犯として指名手配されていた男が50年ぶりに自ら名乗り出たことを考えてみたい。男の名は、桐島聡(容疑者なので敬称は省略する)。神奈川県の入院先で「自分は指名手配されている桐島だ」と名乗ったという。そして自首した理由を「最期は本名で迎えたい」というものだった。桐島は末期がんを患っているという。
自分が「死に直面」して、初めて「死ぬこと」の意味を知ったか。愚かで悲しいと思った。自分の起こした事件でどれだけの人が亡くなったり苦しんだのかと想像したことがあるだろうか。
正直言って、単なる「エゴ」だと思った。自分がやってしまったことを一生悔いながら墓場まで持っていく覚悟はなかったのか。
三菱重工爆破事件では、三菱重工と無関係な通行人を含む死者が8人も出た。爆破による即死は5人、病院収容後に亡くなった方が3人だ。負傷者は376人に至る戦後日本最悪の爆弾テロ事件となった。この被害の規模はオウム真理教によるサリン事件が起こるまでは、最大のものだった。
そして捜査に駆り出された警察公安部の長い闘いもそのときから始まった。それによって人生を変えられた捜査員たちは数限りないだろう。そんな人たちは今回の桐島の「最期は本名で迎えたい」という言葉をどんな気持ちで聞いたのか。それを考えると胸が痛い。
前代未聞の事件に加担した容疑者は、〝最期まで〟他者の気持ちをわからない、わかろうとしない者だった。
2021年に公開された『狼をさがして』は韓国の映画監督キム・ミレ氏が制作したドキュメンタリーだが、白石和彌監督も私と呑んだ際に「いつか三菱重工爆破事件を作品化したい」と言っていた。人間のエゴをどう、白石氏が描くのか、楽しみにしている。

「Sponichi Annex」より

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