【今日の新聞から】人気漫画『スラムダンク』の著作権を侵害ーあまりにも酷似過ぎ……これに気づかない「ずさんさ」に呆れるしかない
9日の鹿沼市長選挙で落選した自民党候補陣営が配っていた政策ビラのイラストが、人気漫画「スラムダンク」を原作とするアニメ映画のポスターと酷似し、著作権法に抵触する可能性があることが指摘されている。政策ビラは「総力結集」の文字にバスケットボールのユニホーム姿の5人が並ぶデザインで、候補者を中心に栃木県が地元の自民党の茂木幹事長ら4人が脇を固め、「あきらめたらそこで鹿沼が終わる」と書かれている(下部ひとつ目の写真)。
正直言って、新聞記事を読んだときは「イメージが似ている」というだけで著作権を制限されるのはどうかと思った。過去の例で「人面電車」に著作権はあるか、というものがあったからだ。これはあるバラエティ番組で芸人が電車の着ぐるみを着て顔出しをする「人面電車」に扮したことが『機関車トーマス』の著作権を侵害するかと議論されたものだ。大学の「放送概論」や「映像デザイン論」などの授業においても私はこの事例を引用して、「著作権の制限」について教えている。「人面電車」に関しては、その発想やアイデアは『機関車トーマス』に限らず、過去に絵本『きかんしゃ やえもん』やイギリスのアニメ『チャギントン』でも使用されている。著作権はもちろん、守られるべきだが、過剰な「著作権侵害」の主張は使用者の権利を制限してしまい、逆に著作権者のビジネスチャンスをはく奪するものと危惧している。
そんなこともあるので、今回もその例に当てはまり、「バスケットボール」「熱い闘い」といったイメージだけで過剰に著作権侵害を主張しているのではないかと考えた。だが、比較されている『THE FIRST SLAM DUNK』のパンフレットを見て驚いた(下部ふたつ目の写真)。
これはひどい。あまりにも酷似し過ぎだ。
というより、パクリとしかいいようがない。構図もそれぞれが取っている格好も同じではないか。陣営幹部は取材に「他県の商店街が同様のポスターを使用しているのを参考に、若いスタッフが作成したようだ」と説明しているというが、「若いスタッフ」だけに責任を押し付けてはいけない。「著作権法上、問題があるかどうかは思い至らなかった」という言葉もいい加減すぎる。幹部はなぜ確認しなかったのか。
こういったずさんな候補が当選しなくてよかったと思うのは、私だけではないだろう。
「東京新聞TokyoWeb」HPより
「東映アニメーションオフィシャルストア」HPより