【今日の新聞から】南太平洋の楽園・ナウルの「台湾と断交」に隠された真実
南太平洋の島国ナウルが台湾と断交し、中国との国交を樹立すると発表した。
これまでにもナウルは、中国や台湾との国交、断交を繰り返している。その裏には中国からの外交的な圧力があることは言うまでもない。このように、中国は近年、台湾の外交相手の切り崩しを加速している。その理由は何か?新聞記事にはそこまでは書かれていない。しかし、その先を知ることが本当は重要なのだ。
南太平洋の中央部、赤道直下にあるナウル共和国。
周囲が約20キロの小さな島国で人口は1万人ほどだ。数千年、数万年にわたって積もった海鳥のフンが島を作り上げ、珊瑚の石灰分と結びついて「グアノ」という肥料となり、巨大なリン鉱石を形成した。第二次世界大戦後に独立したナウルは、リン鉱石の採掘権を手に入れた。島の人々には働かずして、膨大な地代が入ってくるようになった。税金もなく、医療費も無料で、何ら生産することなく、生活物資のすべてを外国からの輸入に頼る生活が続いた。しかし、経済的繁栄を謳歌する時代は長くはない。
リン鉱石の枯渇である。国家は破綻し、「楽園」は「失楽園」となった。そんな背景を知ってもらったうえで、本題に入ろう。
太平洋の島々は長年、中国と台湾が国家承認を争う舞台となってきた。地図上では、中国側から見ると沖縄や台湾などの島々が連なり、太平洋への出入り口を阻んでいるように見える。中国が南シナ海と東シナ海を支配すればするほど、これらの二つの海の間に位置する台湾も支配しやすくなる。いわゆる「囲い込み運動」だ。
「一つの中国」政策を採る中国にとって台湾の存在が邪魔なのは周知のことだ。そのため、台湾を国家として認める太平洋の島国に経済的なプレッシャーをかけて「鞍替え」させているのだ。中国と台湾の「陣取り合戦」は激しさを増している。
ナウルの今回の「鞍替え」は、中国と台湾を天秤にかける小国なりのしたたかな外交戦略なのである。
UnsplashのWinston Chenが撮影した写真