【緊急報告】NHKスペシャル『ジャニー喜多川 “アイドル帝国”の実像』放送後に入ったテレビ局からの「横槍」電話

以前の以下のブログの最後に「ファシズム的な横槍の電話が入った」と記したところ、「どんな横槍か気になる」という多くのコメントをいただいた。https://35produce.com/%e3%80%90%e7%95%aa%e7%b5%84%e8%80%83%e5%af%9f%e3%83%bb%e7%b6%9a%e7%b7%a8%e3%80%91nhk%e3%82%b9%e3%83%9a%e3%82%b7%e3%83%a3%e3%83%ab%e3%80%8e%e3%82%b8%e3%83%a3%e3%83%8b%e3%83%bc%e5%96%9c%e5%a4%9a/
今日はこの件について、緊急報告をさせていただく。
「緊急」と言ってもずいぶん時間が経っているじゃないかとお感じになる方も多いと思う。それほど私にとっては大きなショックの出来事で、気持ちの整理ができるまで書く元気が出なかった。それが時間がかかった理由であることを、お待たせしたお詫びを込めてお伝えする。以下、少し長くなるかもしれない。ご容赦願いたい。

私は自著『弱者の勝利学 不利な条件を強みに変える‟テレ東流”逆転発想の秘密(方丈社刊)』や『混沌時代の新・テレビ論(ポプラ社刊)』で前職の古巣であるテレビ東京の応援をしてきた。ときには厳しくも、愛するが故のエール応援歌を送ってきたつもりである。それは、テレ東は私を育ててくれた親のような存在だと感じているからである。そこには感謝しかない。
そのテレ東の広報担当幹部から、Nスぺ放送の翌日に電話がかかってきた。
後輩にあたるその人物は「ご無沙汰しております」という言葉を皮切りに以下のような話を始めた。

一度会いに行きたい。相談事がある。
私は「何かある」と察知した。そして、時間がないことを告げて、言いたいことがあるのであればこの電話で話してほしいと申し出た。するとその広報幹部は驚くべきことを話し始めたのである。それは、私にとってホラー話かと思わんばかりの聞くもおぞましく、恐ろしい話だった。以下に話を要約すると大きく4つが広報幹部の主張だった。

1. 昨日の放送で多くの視聴者から交換台に電話がかかってきて困っている
2. 制作局(著者注:番組を作る部署)の中でも動揺が走っている
3. だから、今後「元テレビ東京」という肩書を使わないでほしい
4. 加えて、テレビ東京時代に経験したことは話したり書いたりしないでほしい

私は話を聞いている途中でふと思った。
「待てよ、これって基本的人権の侵害じゃない?」
おい、テレビ東京、大丈夫か?
その人物曰く、3.や4.を要求する理由としては「テレ東の発言だと思われると迷惑」とのことだった。「いや、『元』って出てるんだから、誰も私の意見=テレ東の意見とは思わないでしょう」と「広報幹部としての」認識と資質を疑った。
「元テレビ東京社員」という番組内の肩書は、NHK側がつけたものだ。私は番組制作者でないのでその点に関与することはできない。そう告げて「文句があるならNHKさんに言ったほうがよくないか」とアドバイスをした。
今回の上記の4つの主張には、以下の3つの問題が潜んでいると指摘したい。

1. 憲法が定める「基本的人権の尊重」を主導するべきメディアが、自らそれを侵害している可能性がある
/まず私は、番組の中でテレビ東京の名誉や利益を損なうようなことは何も話していない。その人間に発言や発表の制限をかけるということは、ひいては憲法の保証する基本的人権の尊重を侵害する行為ではないのか。しかもその発言や表現に注文を付けるということは、メディア自らが「検閲」をおこなっているということではないだろうか。
2. 退職者の営業妨害をおこなおうとしている可能性があること
/例えば、会社を移籍するような人は、前職の経験を踏まえてキャリアアップをしてゆく。私の場合は、大学で映像教育をおこなって、平行して映像メディア研究の情報発信をしている。いわゆる「生業」としているのである。その私に「昔のことを話したり書いたりするな」と言ったり「授業で経験値や実践値を伝えるな」と言ったりすることは、私の生活基盤を脅かし、その首を締める行為も同然だ。
以上の1.2.が私が「ファシズム的」と表現した理由である。
3. そして、一番ヤバいと感じたのが、「テレ東の発言だと思われると迷惑」という発想だ
/このように発言するということは、テレ東は今回私が番組内でおこなった「これは、テレビを中心としたメディア全体が考えるべきだ」という問題提起に賛同していないということになる。広報幹部が言うのだから、これは「テレ東全体のテレビ局としての見識」と考えられなくもない。これが私が「横槍」と表現したゆえんである。

「テレ東の発言だと思われると迷惑」というのも、こちらを馬鹿にした失礼な発言だ。もし放送のなかのテレ東での経験に関する私の話がテレ東の利益を侵害するような内容だと言うのであれば、それは「テレ東が、当時ヤバいことをやっていた」ということを自ら認めることになるのではないか。以上のようないろいろな思いが私のこころのなかに押し寄せてきて、悲しくなった。
「親の心子知らず」ならぬ「子の心親知らず」である。親に見放され捨てられた子どものような気持だ。
大好きなテレ東に裏切られたような思いすらしてくる。
この広報幹部が、社内のどこかでテレ東役員と思しき人物に「こんなふうにしゃべられたらヤバいだろ!」と怒鳴られ、「すみません」と謝っていたという目撃情報も入っている。おそらく、私が番組内で話したことを指しているのだろう。このことから、もしかしたらこの広報幹部は自らの意思でなくて上から命令されて私に電話してきたのかもしれない。しかし、それならなおさら「メディア人として、それでいいのか?」と問いたい。

目を覚ませ! テレ東!!
そして、「最近、うちの局、ヘンだぞ」と思っている同志の諸君、勇気を出して声を上げよう!

立派なテレビ東京本社「テレビ東京 この10年の歩み」より
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.tv-tokyo.co.jp/tx-60th/shashi/pdf/03.pdf

【緊急報告】NHKスペシャル『ジャニー喜多川 “アイドル帝国”の実像』放送後に入ったテレビ局からの「横槍」電話” に対して10件のコメントがあります。

  1. きつねうどん より:

    「ジャニーズじゃないんだから…」と思うほどの釘の刺し方ですね…。
    そういうところですよ、既存のマスメディア。
    変わって欲しいものです。そして、そう言った「忠告」が効かない世の中になっていることに気づいてほしいです。
    制作の常識は世の中の非常識、ということなんでしょうね…。

    1. 田淵 俊彦 より:

      きつねうどん様
      コメントありがとうございます。
      そうなんです、怒りを通り越して悲しくなるほどの念の押しように、驚きました。
      ここまで状況はひどいのかと・・・。
      一部の愚かな人間のせいで「テレビ局は」「テレビ東京が」とひとくくりにされる、
      クリエイターたちや関係者がかわいそうです。
      田淵俊彦 拝

  2. 黒沢淳子 より:

    NHKスペシャルご出演に留まらず、勇気あるご報告本当にありがとうございます。自分達の利益と保身しか考えないテレビ局幹部、次のジャニーズ事務所ができてもおかしくない(既にあるかもですが)汚い闇が一般にも広く認識されて、田淵先生の背中を見て二度とこのような犯罪を起こさないと立ち上がる局員等メディアの人が増えることを期待したいです。
    田淵先生にはこれからも、お身体にご留意の上、勇気ある後輩達の支援をお願いしたい気持ちでいっぱいです。

    1. 田淵 俊彦 より:

      黒沢敦子様
      コメントありがとうございます。
      仰る通り、ご認識頂いているように悪いのは「テレビ局の幹部」で、現場は悪くない。
      心あるクリエイターたちは「最近のテレ東はおかしい」と頭を悩ませています。
      そんな彼らが立ち上がれるようにしてあげれないかと思っています。
      ご支援よろしくお願いいたします!
      田淵俊彦 拝

      1. 黒沢淳子 より:

        お忙しい中、返信いただきありがとうございました。

  3. 矢口敦子 より:

    テレビ局はいつからこんな事なかれ主義に陥ってしまったのでしょう。
    こんな態度では、まともな番組を作れるはずがないと思います。
    なお、Nスペを視聴して、田淵さんが元テレ東社員だと認識はしましたが、テレ東を代表してお話しているとは微塵も思いませんでした。
    テレビ局は視聴者の頭の程度をとてもとても低く見積もっているのでしょうか?
    田淵さんが出身会社の横槍にめげす、今後もいいお仕事をしてくださることを期待しています。

    1. 田淵 俊彦 より:

      矢口敦子様
      コメントありがとうございます。
      そうなんです・・・私は辞めた後もテレ東が好きだっただけに、
      かなりがっかりすると同時に悲しくなりました。
      自分はこんな会社に人生を費やしたのかと・・・。
      テレ東にはいい人もいるんです。いや、いい人間のがほとんどなんです。現場のクリエイターたちは、真摯に頑張っています。
      戦争と同じで戦争をしている国の民が悪いわけではなく、一部の愚かな指導者や上層部がしたことが、
      すべての責任になってしまう。悲しいことですね。
      だから、「視聴者を低く見積もっている」のも、テレビ局の人間ではなく、テレビ局を操り牛耳っている一部の人間です。
      田淵俊彦 拝

  4. 相澤直美 より:

    テレ東ファンとして、とても悲しい気持ちでいっぱいです。テレ東だけは他のキー局と違うと思ってきました。
    今回も、よくぞ言ってくれたと思うくらいの気概を期待したのですが、本当に残念です。
    広報はじめ一部と思いたいです。
    そうでないのなら、私が好きだったテレ東は、もうないのかもしれないですね。

    1. 田淵 俊彦 より:

      相澤様
      コメントありがとうございます。
      テレ東の現場はとても真摯に番組作りに取り組んで、いまも頑張っています。
      良くないのは一部の「権力」を勘違いしている人たちです。
      そんな人は会社を辞めて一般人になったら、自分の力がなかったことに気がつくのでしょう。
      なので、今まで通りにテレ東や番組は応援してください。お願いします。
      と同時に、一部のとんでもない人たちを駆逐しよう、立ち向かおうという人たちが出てきたらその人たちも応援してあげてください。

  5. 相澤直美 より:

    田淵様
    ご返信ありがとうございます。
    現場の皆様の頑張りをこれからも応援したいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です