【今日の新聞から】「再起動」クールジャパンの目玉はコンテンツ産業ー目標だけは立派だが、その形骸化が懸念される

すっかり聞かなくなったなぁと思っていた言葉が、最近息を吹き返した。「クールジャパン」だ。2010年あたりに流行った言葉だが、「世界から「クール(かっこいい)」と捉えられる(その可能性のあるものを含む)日本の「魅力」」を指す。外国人がクールととらえる日本の魅力は、アニメ、マンガ、ゲーム等のコンテンツ、ファッション、食、伝統文化、デザイン、ロボットや環境技術などを指していた。
しかし、安倍政権下で巨大な赤字を出し、すっかり「黒歴史」になった感があった。
しかし、息を吹き返した。さすがは安倍氏肝いりの岸田内閣だけあって、構想や目標だけは大きく安倍氏のさらに上をゆく。今回大々的に発表された「クールジャパン新戦略」コンテンツ産業の海外展開を2033年までに4倍の20兆円にするというものだ。
どこかで聞いたことがあるような目標だなぁ・・・そうだ!「20年までに指導的地位の女性比率を30%に」と掲げた目標「2030」だ。これは確か先送りされたはずだ。どうも、政治家の方々は「ぶち上げる」のがお得意でお好きなようだ。しかし、今回の「クールジャパン新戦略」に対して私は以下の3つの指摘をしたい。

1.前回の反省はどうなっているのか/我々が番組を作るときも、前回の番組の反省を「総括」というかたちで振り返り、その失敗を次に生かそうと努力する。そういった姿勢がまったく見えない。
2.「ヒト・モノ・カネ」の「ヒト」はどうなっているのか/目標だけ掲げてそこに向かって突っ走れ!というのはいまの民放テレビ局のマネタイズに見られるような傾向と同じだ。ヒトに関わる様々な問題、労働環境などの整備をちゃんと考えられているのだろうか。
3.得意の「バラマキ」が起こらないか/ともすれば政治家の方々は「庶民感覚」や「市場感覚」に欠けるきらいがある。いつもの点数稼ぎのバラマキが起こらないか、それによって現・官民ファンド「クールジャパン機構」の赤字356億円がさらに膨らまないかと懸念する。

まず以上のような懸念点や疑問点をしっかりと検証し、解決してから「再起動」してほしい。日本の魅力を海外に伝えるということ自体はとても素晴らしいことだと思うし、それを日本人の特異な「モノづくり」で実現してゆくことは良いことだと考える。それだけに、その志が政府やこころない政治家の方々の私利私欲にまみれないことを祈りたい。

「読売新聞オンライン」より

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です