【今日の新聞から】バイデン氏がアメリカ大統領選挙から撤退ートランプ狙撃犯の動機を「政治」にすり替える巧妙さ

「やはり」といった感がある。バイデン氏がとうとう11月のアメリカ大統領選への出馬を断念した。
遅きに失した感があるが、ほとんどの方が「さもありなん」という思いを抱いただろう。このバイデン氏撤退は、6月の討論会での精彩を欠いた発言や立ち振る舞いがきっかけとなったことは周知の事実だが、トランプ氏有利の流れを決定づけたのは、何といってもトランプ氏狙撃事件だ

しかし、私はこの狙撃事件を取り上げて、「政治の道具」に使うやり方には疑問を感じている。もちろん、今回のテロ行為は許されるものではない。だが、今回の犯行の動機についてはいまだ明確になっていないはずである。もしかしたら、「政治的な反発」が理由ではないかもしれない。
これまでのテロには、背景に政治・宗教があった。しかし、現在のテロの特徴は、犯人の動機の不明確さである。日本においても、いまだ岸田文雄首相襲撃事件の容疑者には犯行に及ぶだけの明確な動機が見つかっていない。容疑者が完全黙秘を貫いているため公判手続きが進んでいないからだ。
だが、トランプ氏はこの襲撃テロを巧妙に「政治」に利用した。犯人は単に目立ちたかった「愉快犯」である可能性もある。ノンポリかもしれない。トランプ氏のことが個人的に嫌いだっただけかもしれない。その場合、「政治」には関係ないし、トランプ氏の主義・主張に反対するものでもないはずだ。

どこかで論旨がすり替えられている。そう感じるのは私だけだろうか。

「毎日新聞デジタル版」より

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