【今日のタブチ】コーヒー豆の価格が高騰~エチオピアの「コーヒーセレモニー」の思い出
世界的にコーヒー豆の価格が高騰しているという。これは気候変動による干ばつなどが進み、収穫が振るわないためだ。このニュースを読んで、私は昔、ドキュメンタリーの撮影で訪れたエチオピアのことを思い出した。
エチオピアには、「コーヒーセレモニー」と呼ばれるコーヒーの作法が存在する。日本で言うところの「茶道」に似ているこのもてなしの作法は、一般的には、乳香をたき、生豆を煎るところからはじめて、お客さまひとりひとりに淹れたてのコーヒーを飲んでもらうというものだ。現地では、女性はこれができないと一人前とみなされない。その手順は以下のようなものだ。
【コーヒーセレモニーの手順】
1.まず生豆を水で丁寧に洗う
2.豆を煎り、焙煎した豆の香りを楽しむ
3.焙煎した後、その豆を木臼と杵で砕く
4.「ジェベナ」という伝統的なポットでお湯を沸かし、その中に砕いた粉を入れて煮出してゆく
5.煮出された後数分置き、粉がポットの下に沈むのを待って、上澄みをデミタスカップに注いでゆく
コーヒー・セレモニーは3杯楽しむことができる。最初の1杯は「健康のため(アボール)」、2杯目は「愛のため(トナ)」、3杯目は「祝福のため(ベレカ)」。
なんと、ロマンティックなことか。
そのまま飲んだり、エチオピアのハーブを入れたり、塩を入れたりして、味や香りの変化を楽しむ。これにも多様性がある。エチオピアには80以上もの部族があるため、部族によってコーヒーの飲み方も様々だ。コーヒーにバターをいれて飲む習慣を持つ部族もいる。
とても手間がかかるおもてなしの「コーヒーセレモニー」だが、ロケのときには、ゆく先々でコーヒーを振る舞われるため、大変だ。
急いでいても、断ってはいけないからである。
おもてなしは、受けなければならない。いつも撮影のときには「日が暮れてしまうんだけどなぁ……」と内心ひやひやしながら、とても豊潤でおもてなしの心がこもったコーヒーをいただいていた。
とても贅沢でありがたいことだが、そんな貴重な習慣や伝統も、気候変動によって失われてゆくとしたら、寂しく悲しいことだ。
「UCC COFFEE MAGAGINE」より
https://mystyle.ucc.co.jp/magazine/