【今日のタブチ】《ガラスの天井》を破ったはずが……高市早苗政権が生み出す、“ジェンダー逆行の”システム

今朝の新聞には「選択的別姓 遠のく」という見出しが躍っていた。政府は、結婚に伴い改姓した人の旧姓使用を法制化する法案を、来年の通常国会に提出する方向で検討に入ったという。ここには、旧姓の通称使用が持論の高市早苗首相の意向が強く反映されていると推測されている。朝日新聞はこう報じている。「高市首相は旧姓使用の法制化に前向きな姿勢を示しており、選択的夫婦別姓には慎重な立場を崩していない」(朝日新聞デジタル、2025年12月)。
選択的夫婦別姓は、長年議論されてきたテーマだ。世論調査では賛成が過半数を超えることもあるが、保守層の強い反発で法制化は進まなかった。今回の「旧姓使用法制化」は、あくまで現行制度の枠内で便宜を図るだけで、家族観の根本的な見直しには踏み込まない。女性首相誕生という象徴的な出来事にもかかわらず、制度改革は遠のいている。

先日の東京高裁による同性婚違憲判決も、同氏の意思を意識したものだという指摘がある。NHK解説委員室は次のように述べている。「判決は国会の立法裁量を強調し、現政権の保守的な家族観に沿う判断とみる専門家もいる」(NHK解説委員室、2025年11月)。同性婚を認めるか否かは、個人の尊厳と法の下の平等に直結する問題だが、司法も政権の空気を読んだかのような判断を下した。

高市政権が発足してから約3カ月。保守派の高市氏の意見や考えを極端に取り入れたかのような政策や判断が散見される憲法改正論議の加速、防衛費の大幅増額、選択的夫婦別姓への慎重姿勢、LGBT関連法案への消極的対応、放送法解釈をめぐる強硬な立場、メディアへの介入を疑わせる動き、非核三原則の拡大解釈による核抑止論議の封じ込めなど数え上げれば枚挙にいとまがない。
憲法改正論議では「緊急事態条項」の導入が焦点となり、国民の権利制限につながる懸念が指摘されている。防衛費は過去最大規模の増額が検討され、財政負担は国民生活に跳ね返る。放送法をめぐる姿勢は、報道機関への圧力と受け取られかねず、言論の自由を脅かす危険がある。非核三原則の「厳格化」は、核抑止論議を封じ、現実的な安全保障議論を狭める。

これらは、女性首相誕生という歴史的な出来事の裏側で、むしろ時代に逆行するような制度設計が進んでいることを示唆している。《ガラスの天井》を破ったはずの高市氏が、実は旧態依然の家族観や社会構造を再構築しようとしているのではないか。
この国のジェンダー平等や多様性の議論は、再び遠のいていくのかもしれない。首相の言葉と行動を、私たちはもっと厳しく検証する必要がある。

「朝日新聞デジタル」より

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