【今日のタブチ】「多死社会」の影に潜む《無縁仏》4万2千体――“尊厳ある最期”を守る社会へ

厚生労働省が葬儀会社の遺体管理や衛生面に関するガイドラインを作ったというニュースを読んだ。政府が亡くなった方の遺体にまで“口を出す”のかと、一瞬思ったが、そこには深い“闇”が隠されていた。

背景には「多死社会」の到来がある。厚労省の人口動態調査によると、2024年の死亡者数は1,618,684人で、前年より約42,748人も増えた。約2.7%の増加だ。03年に死亡者が100万人台に達して以来、増加傾向には歯止めが利かない。
今回のガイドラインは、こうした状況の中で遺体の「取り違え」が増えていることへの対策だ。そして、この「取り違え」がなぜ起こるのか。その裏に“闇”がある。葬送ジャーナリストの碑文谷創氏は、要因として親族らの引き取り手がない遺体、いわゆる「無縁仏」が増えていることを指摘している。
全国の自治体が2023年度に火葬や埋葬をした無縁仏は推計で約4万2千人。同年の死亡者数は約157万6千人だから、約2.7%の遺体が“身元がわからない”ということになる。これは現代社会の「孤立」を映し出している。私は再三述べているが、「孤立」は「孤独」とは違う。友人や仲間に囲まれて賑やかに暮らしていても、社会から「孤立」している人はいる。「身近な貧困」として挙げられるホームレスもそのひとつだ。

ここから先は、なぜこうなっているのかを考えたい。
高齢化と単身世帯の増加はもちろんだが、地域コミュニティの希薄化、未婚率の上昇、そして死後の事務を担う仕組みの不透明さなどの理由が複雑に絡み合いながら重なっている。
こうした現実の先にあるのは、「誰にも看取られない最期」だ。人間として「尊厳のある最期」を迎えたい――そう誰しも思っているはずなのに、その願いが叶わない人が増えている。
だからこそ、看取りを「社会化」する仕組みが必要だ。地域包括ケアの枠組みで、医療や介護だけでなく、死後の事務や見届ける人のネットワークを組み込む。単身高齢者が増える時代に、死後事務委任や緊急連絡先の登録を当たり前にし、地域の生活支援コーディネーターが「弱い紐帯」をつなぐ。最期を孤立させないために、制度と地域の力を重ねることが、無縁仏を減らす唯一の道だ。

SNSやタイパの流れの中で他者の「顔」が見えなくなっている今だからこそ、「最期の刻」を守れる社会にしたい

「多摩中央葬祭」HPより

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