【今日のタブチ】今年の漢字《熊》から《クロコダイルマン》へ――年の瀬に問う「動物との共生」

今年の漢字は「熊」
世相を映すとはいえ、被害の深刻さを考えると、手放しで喜べる選択ではない。もちろん、日本漢字能力検定協会や清水寺を批判するつもりはないし、応募で決まる以上、仕方ないのだが、私は違和感を覚えた。なぜなら、熊による被害があまりにも大きく、「軽々しい」印象を与えかねないからだ。
人類学者で秋田公立美術大学准教授の石倉敏明氏はこう語る。
「クマは恐ろしい敵で、対決し駆除しなければいけないという戦争のような物語と、人間によって虐げられてきたかわいそうな存在で、殺してはいけないという動物愛護の語りに世論が二極化している」
この「二極論」こそ、日本社会の典型だ。石倉氏も指摘するように、東北のマタギの実践に学ぶべきだろう。山に敬意を払いながらもクマを狩り、その資源を利用する――動物と人間を分断するのではなく、共生させる考え方である。危ないから殺せ、怖いから排除せよという発想は、あまりにも短絡的だ。
私は、パプアニューギニアクロコダイルマンを思い出す。
ドキュメンタリー制作で訪れたセピック川流域には、ワニと共生する人々がいる。彼らはワニを畏れ、敬い、同時に狩り、その肉をいただく。そして男たちは幼いころから身体に傷を刻み、ワニの皮膚のような突起を重ねることで、全身をワニ柄に彩り、一人前の「クロコダイルマン」になる。身体加工による通過儀礼だ。
日本とPNG。遠く離れた二つの場所に息づく、動物とともに生きる知恵。そこにこそ、いま日本が探している答えがある。

「読売新聞オンライン」より

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