【今日のタブチ】リニア工事で地表隆起――地下を掘り、地上には高層ビル乱立……都市の「暴走」とその「ツケ」

東京品川区で10月、リニア中央新幹線トンネル工事現場のほぼ真上にある区道交差点が隆起し、JR東海は工事が原因であることを認めた。これは「安全」と説明されてきたリニア工事の前提を揺るがす事態だ。昨年10月には第一首都圏トンネル工事が原因で東京都町田市の民家の庭に水と気泡が湧き出し東京外環道路工事では調布市で陥没事故が起きている。大深度トンネル掘削による地表影響は、もはや“他人事”ではない。

JR東海は「大深度地下は地表に影響しない」と繰り返し説明してきた。根拠は、地盤の安定性、覆工構造、モニタリング体制。しかし現実には隆起や沈下が発生している。これは単なる“想定内”の変状ではなく、地下水流や地盤応力の変化が複雑に絡むリスクであり、最悪の場合、道路陥没や建物被害に直結するという証しだ。大事故につながる恐れがあることを、ここで強調しておく
さらに、推察される影響は隆起や沈下だけではない。地下水の流れが変化することで、井戸や湧水の枯渇、逆に湧水の異常発生が起きる可能性が指摘されている。実際に、岐阜県瑞浪市では掘削で大量の湧水が地表に流出した結果、井戸の水位が低下し、水田や住宅に地盤沈下が発生した。専門家会議では、トンネル掘削が地下水位や地盤応力に影響し、微小断層の刺激を通じて地震リスクを高める懸念も示されている。
掘削残土の大量搬出による環境負荷も深刻だ。FoE Japanなどの調査では、東京ドーム約50杯分もの残土が発生し、有害物質を含む土が住宅地に仮置きされる事例が報告されている。さらに、騒音・振動についても、新幹線トンネル出入口付近で生活環境への影響が確認されており、長野県内の調査では低周波や振動が室内に伝わる事例もある。
これらの影響は、JR東海の「影響なし」とする公式説明とは乖離しており、現場ではすでに実害が生じ始めている。

それでもなぜ工事を強行するのか。リニアの目的は「東京―名古屋を最速40分、東京―大阪を67分で結ぶ」ことだ。東京―博多間で見れば、現行の東海道新幹線で約5時間、リニア導入で数十分短縮に過ぎない。ここまでの危険性と巨額の事業費をかける合理性はどこにあるのか。その答えは「誰が得をするのか」という構図にある。総事業費は9兆円超。主要工区は大林組、鹿島、大成、清水などのゼネコンJVが受注し、談合事件で課徴金が科された事実もある。巨額の公共性を帯びたプロジェクトで利益を得るのは、建設業界とJR東海、そして融資を担う金融機関だ。利用者の利便性より、業界の利益が優先されているのではないか。

地下では掘り進め、地上では高層ビルやマンションが乱立する。
平地が少ない日本で「仕方ない」と言うのは簡単だが、地球に負荷をかけ続ける都市構造のツケは必ず回ってくる。隆起や陥没はその予兆だ。人間の都合だけで地下も地上も拡張し続けることへの歯止めを、今こそ考えるべきだ。

「日テレNEWS NNN」より

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