【今日のタブチ】「オンカジ」が若者を蝕む――脳科学が示す《依存症》の危険性

オンラインカジノ「オンカジ」と呼ばれていることを、私は最近まで知らなかった。それくらい、私には縁遠い世界だ。しかし警察庁の調査によれば、オンカジ利用経験者は推計約337万人、そのうち10代は18万人に上るという。これは見逃せないデータだ。

運営国では合法でも、日本からアクセスして儲ければ、知らずに賭博罪に問われる。単純賭博罪なら50万円以下の罰金、常習賭博なら懲役3年以下。実際、吉本興業の芸人6人やフジテレビ元アナウンサーが書類送検され、略式起訴で罰金10万円を科された。YouTuberは懲役1年・執行猶予3年、運営者は懲役3年(執行猶予4年)+罰金300万円という重い判決を受けている。誰もが「グレーゾーン」と思って始めた結果が、前科者という現実だ。

さらに怖いのは依存症だ。ギャンブルは脳の報酬系(喜びや興奮を感じる機能)を刺激し、「成功報酬」が刷り込まれるとやめられなくなる。麻薬やゲーム、万引きと同じ構造だ。昭和医科大鳥山病院精神科の常岡俊昭准教授は「アルコールと同じで、ギャンブルも年齢が若いほど悪影響を受けやすい」と指摘する。
本当にそうなのか。調べてみた。
すると、ちゃんと科学的な裏付けがあった。
脳科学の研究によれば、依存症患者では報酬系が過剰に活性化し、前頭前野という“意思制御のブレーキ”が機能低下する。これにより、リスク判断の切り替えができず、無謀な行動へと傾く状態に陥る。そして、若者はこの脳の発達途中にあり、「報酬を追い求める欲」と「ブレーキをかける力」のバランスが未成熟だ。報酬系は思春期に急速に成熟する一方で、判断力を司る前頭前野は20代半ばまで伸び続ける。結果として、「快感を優先し、危険を見逃す」傾向が強まりやすいのだ。

オンラインギャンブルはこの仕組みに拍車をかける。24時間手元のスマホで、すぐに金が増えるという快感を得られる環境は、まさに若者の脳にぴったりとマッチし、依存症を急速に加速させる。実際、短期間で数百万円の借金、うつの併発といった深刻な事態が起きており、全国調査では依存が疑われる人が140万人を超え、その多くは若年層である。
さらに、SNSでの拡散やキャッシュレス決済が「お金を使っている感覚」を薄め、歯止めを失わせている。広告は「簡単に稼げる」「初回ボーナス」などの甘い言葉で若者を狙い撃ちしている。ある高校生は、SNSで紹介されたオンカジに手を出し、半年で300万円の借金を抱え、退学に追い込まれたという。

地球の未来を担う若者たちに、こんなリスクを背負わせていいのか。何の気なしに始めた「オンカジ」が、人生を狂わせる。
そうしないために、私は二つの提案をしたい。若者を守るための「回りのケア」と、違法アクセスを防ぐための「法整備」だ。
回りのケアでは、学校や家庭で「オンカジは違法」「依存症の仕組み」を教えるリスク教育が必要だ。SNSや学校で匿名相談できる窓口を整え、キャッシュレス決済で「お金を使っている感覚」が薄れる心理を理解させるデジタルリテラシー教育も欠かせない。
法整備では、違法サイトへのアクセス遮断、クレジットカードや電子決済でのオンカジ利用禁止、誤誘導広告の取り締まり、そして海外運営サイトへの国際協力が不可欠だ。

教育と制度、この両輪がなければ、未来は守れない。

東北総合ポータル「topo」より

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