【今日の新聞から】刑務所で出産、女性受刑者の「育てる権利」
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(以下、HRW)」によると、2011年から2017年に刑務所の中で出産した女性受刑者計184人のうち3人しか養育に関われなかったという。しかもこの3人も12日間、10日間、8日間だけだった。刑務所長の許可があれば、女性受刑者は出産後、最大で1年6カ月、刑務所内で我が子を養育する権利があるという。恥ずかしながら正直に告白すると、法学部出身で刑法を専攻、刑務所巡りの学外学習をよくしていた身でありながらその事実を私は忘れてしまっていた。
このデータから考えなければならないのは、刑務所の女性受刑者は子育てをすることができるのか(そういう環境にあるのか)という問題である。同じくHRWによると、2021年に女性受刑者が入所した理由として一番多いのは窃盗5割、その次が覚醒剤取締法違反で3割だという。こういった軽微な犯罪者に関しては、刑務所での収容の仕方を変えるなど子育てができる環境を整えてあげることが必要ではないだろうか。
刑務所で生まれた子どもはそのほとんどが実際には生まれてすぐに親族や児童養護施設に渡されているというが、ここには「受刑者の分際で子育てなんて」という差別的な意識がないだろうか。「子どもを取り上げられた」と感じる受刑者もいるに違いない。昨今では刑に服した後の再犯率の高さも社会問題になっている。再犯防止の観点からも、刑務所内での子育て促進には賛成したい。女性受刑者も自分の子どもを育てることで「この子のために生きてゆこう」といった希望や生きる目標なども生まれるだろう。それは犯罪抑止に繋がる。また、子供側にとってもメリットがある。皆さんはご存じだろうが、「愛着障害」という言葉がある。生まれてから1歳半くらいまでの間に親などの保護者からしっかりと愛情を注いでもらえなかった場合、その後の生活や対人関係、コミュニケーションに障害が生じるというものだ。こういった子どもにしないためにも、幼いころに親と過ごす時間の確保は命題だ。そんなこどもの権利が奪われていいはずがない。
「塀の中の話だ、関係ない」と思わずに我がことのように考えたいものだ。