【おススメ書籍】『石原家の兄弟』――慎太郎という《太陽》を輝かせた《月》の存在、そして4人の息子の“軌跡”のものがたり

『石原家の兄弟』を読んだ。
知ってはいるが、よく理解しているとは言えなかった石原慎太郎と石原家の息子たちのことが、よくわかった。
そして本書は、有名人一家の舞台裏を覗くだけでなく、家族の本質を考えさせる一冊だ。
4人の息子は、伸晃、良純、宏高、延啓。母親はその月だったのだろう。そして息子たちは、この母の月の光に照らされながら育ったのだと確信した。父の強烈な光を和らげ、家族を包み込む静かな引力――それが母・典子だった。たとえば、父が深夜まで執筆する間、音を立てずに昼過ぎまで待ち、ご飯・パン・そばの三種類の朝食を用意した母の姿が、息子たちの記憶に残っている。静かな献身こそ、月の光だった。
良純が語る、横浜駅で母と電車を待つときに感じた「大きくて温かい手」。それは、強烈な父の陰で、子どもにとって唯一の安心感だった。

恐ろしいまでに破天荒だった慎太郎が、意外と小心者で、病気になってからは、強さを誇った男が、静かに恐れを口にした。「痛いのは嫌だ」「死にたくない」――その言葉に、人間の本質が垣間見えた。本書に出てくる、叔父・裕次郎が最後まで毅然としていた死にざまと比べると、その差は天と地だった。そういう意味では、石原慎太郎という人は、極めて「普通の人」だったのかもしれないと思えた。

良くも悪くも、とても恵まれた家族の愛情ものがたり。それだけに、ほっこりしたり心温まるエピソードが満載だ。一例を挙げると、家族旅行で慎太郎氏が「温泉は一度入れば充分」と言い、突然予定を変えてしまうドタバタ劇。それでも家族は笑いながら旅を続けた――そんな場面が、この家族の絆を鮮やかに浮き彫りにする。(我が家でこんなことやったら大騒ぎだが……)
こうした贅沢な旅や柔軟さは、冷静に考えれば「一般家庭ではこうはいかないよな」となる。そこはどうしても「エリート家族」のイメージはぬぐえない。
だが、大事なのは、父をはじめとして母、叔父、4人の息子たち、すべての登場人物がとても“努力家”だということ。そして、人との付き合いや繋がりを大切にしているということ。そして、その“絆”“縁”に感謝しているということだ。単なる金満家族の自慢話ではない。

SNSが社会を席巻し、核家族化が進み、家族間においても疎遠になり、同じ屋根の下でLINEが飛び交い、家族旅行すら調整が難しい時代に、石原家の“濃すぎるほどの”関係は、まるで一つの太陽系のようだ。互いの重力で結びつき、軌道を守りながら生きる姿は、私たちが忘れかけている家族の原型を映し出している。この本は、単なる有名人一家の舞台裏ではない。濃密な重力で結ばれた家族の姿が、私たちに問いを投げかける。
家族とは何か、親子とは何か……。
あなたの家族には、どんな“軌跡”があるだろうか?

「Amazon」HPより

【おススメ書籍】『石原家の兄弟』――慎太郎という《太陽》を輝かせた《月》の存在、そして4人の息子の“軌跡”のものがたり” に対して2件のコメントがあります。

  1. 小田切豊 より:

    ご紹介をありがとうございます。
    石原慎太郎は、小説はエッセイはかなり読んでいますが、なかなか本人の素顔が見えなかった方なので、この本を読んでみたくなりました。
    また、本の紹介も宜しくお願い致します

    1. 田淵 俊彦 より:

      小田切様
      コメントありがとうございます。
      スルスル読めるので、読んでみてはいかがでしょうか?
      石原慎太郎というアイコンは、彼の妻や子どもたちによって支えられていたということが、
      よく理解できる書です。
      田淵 拝

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