【お知らせ】桜美林大学 卒業制作展2023の成果と「アート脳」
1月26日~本日31日まで桜美林大学ひなたやまキャンパスで、芸術文化学群ビジュアル・アーツ専修の卒業制作展が開催された。本学は、3年生には「専攻演習」という授業でゼミ活動を行い、4年になると「卒業研究」という授業を履修した学生は、1年間かけて卒業制作に励むことになる。
私にとっては、去年の4月に入職して初めての卒業制作展だが、想像した以上に「ハイレベル」で驚いた。正直言ってもっと「拙い」ものだと思っていたのだが、「なかなかいい作品を創るなぁ」というのが実感だ。ジャンルは3つで、絵画や立体造形のようなファインアートの「アート系」、グラフィックや工業・広告デザインなどの「デザイン系」、アニメや実写、インスタレーション、プロジェクションマッピングなどの「映像系」である。
いま、ビジネスの現場や社会で「アート思考」が注目されている。そしてそのアート思考を実践できる「アート脳」を持った人材が重用されてきている。なぜいま、「アート思考」なのか? そして「アート脳」を持つ人材とはどのようなものなのか?
アートは日本語で「芸術」。そもそも、芸術とは他者と美意識を共有することを意味する。そこには「共有」という意識がある。私は、これからの先行きが見えないVUCA時代には「共有」と「ハイブリッド」がキーワードになると考えている。財産や知識の「共有」によって、「互い」や「皆」が豊かになるのだ。またこれからの複雑化する社会問題は「ハイブリッド」な視点がないとその問題の本質を「あぶり出す」ことが不可能だと考えている。これまでは「PBL(問題解決学習法)」という手法が重宝されてきた。ある程度の予測や推測ができる世の中であれば、問題を発見するだけでなく、問題解決法を見いだして改善してゆくことができた。しかし、これからの時代はそれでは立ちゆかない。いわゆる「問題点の洗い出し」がしっかりとできないと解決の手段もあいまいになってブレてしまうのだ。他人が出した問題点に対して意見を言うのは誰にでもできる。しかし、実は普通に見えることや素晴らしい出来事や物事のように思えることに「問題」が潜んでいると言い当てることは意外に難しい。
だが、ここで考えてみよう。芸術作品を作るプロセスはまさにそれをやっているのではないか。自分が作る芸術品のどこがいけないのか、もっとどこをどう改善すればよくなるのかということを試行錯誤しながらアーティストたちは作品作りに挑んでいる。すでに「アート脳」が出来あがっているのだ。そして、私が勤める桜美林大学芸術文化学群はまさにそれを日々、実践している現場である。
普通の美大や芸術系の大学は、入学するときに専攻を決めてそのフィールドを突き詰めてゆく。写真学科であれば卒業するまで写真を極める。絵画や映像もしかりである。もちろん、その方法もいいだろう。しかし、本学では前述したような「ハイブリッド思考」を重用し、入学してからも映像、ファインアート、立体造形、デジタルアート、工業デザイン、演劇、ダンス、音楽など領域を縦断して学びを進めてゆく。
そうするとどんなことが起こるのか?「アート脳」がさらに進化してゆくのだ。
「アート脳」とは自分の内なる声を聞き、それを表現することによって世の中に「ちがい」を生み出し、その結果人々に感動や問題提起を与えることを目的とした思考法だと私は定義している。
それはまさにデジタル化によって生じた「多様社会」にぴったりの考え方なのだ。
桜美林大学ひなたやまやまキャンパスでの「芸術文化学群ビジュアル・アーツ専修 卒業制作展」の様子
「桜美林大学 芸術文化学群ビジュアル・アーツ専修 卒業制作展」ポスター
*学生がデザイン・制作をおこないました
「桜美林大学 芸術文化学群ビジュアル・アーツ専修 卒業制作展」ハガキ表面
*学生がデザイン・制作をおこないました
素敵な取り組み。
私の教え子たちも1月中旬から
卒業制作・卒業公演のシーズンに
入っています。
岡仁様
コメントありがとうございます。
芸術系の学生たちにとっては、まさに真骨頂のとき。
岡先生の学生の皆さまの実り多い成果を祈念いたしております。
田淵俊彦 拝