【今日の新聞から】「北陸新幹線延伸」という明るいニュースに隠された現実
北陸新幹線の金沢ー敦賀間、およそ125キロが延伸開業した。これで東京と福井が乗り換えなしで行き来できるようになった。「能登半島地震の被災地の勇気になる」と現地でも歓迎ムードだ。このニュースはとても明るいもので、そのこと自体は喜ぶべきことだ。
だが、こういった明るいニュースの裏側にももうひとつの「隠された現実」があることに、私たちは気づかなければならない。
新たな新幹線停車駅となった石川県の加賀温泉駅周辺では、能登半島地震で被災し、旅館などに避難している人々から「観光客が増えて、肩身が狭くなる」という不安の声が出ている。こういう思いでいる人を「自分勝手だ」と一刀両断することは簡単だろう。しかし、考えてみたい。いま、一番ケアが必要なのは誰に対してなのか。
避難している人の中には、避難先の宿から「観光客も宿泊しているので、ロビーをウロウロしないでくれ」といわれた人もいるらしい。
ナンセンスだ。被災した人には罪はない。ごく普通の生活を我慢する必要もない。ロビーを歩くのは自由だ。それが嫌ならば、被災者を受け入れなければいい。
「被災者は世話になっているのだから、部屋でじっとしていろ」とでも言いたいのだろうか。怒りを通り越して、悲しくなった。
こういうような、「広がる世界」や「輝く笑顔」の裏側にある現実にも目を向けられるようでありたい。今朝のニュースを読んで、そう思った。
「静岡新聞DIGITAL」より