【今日のタブチ】『VIVANT』を地で行く「人的地図」の正体──アフリカ、東南アジア、研究者、飲食店経営者……陸自情報隊は何を見ていたのか
今朝の新聞記事を読んでいて、ふとドラマ『VIVANT』を思い出した。もちろん、ドラマの内容そのものではない。あの作品を見ながら私が感じていた、どこか得体の知れない違和感である。
現実の世界は複雑だ。ところが人は複雑な世界を理解しきれない。だから国と国を分け、味方と敵を分け、わかりやすい物語をつくる。私は『VIVANT』を見ながら、そんなことを考えていた。
そして今朝の記事である。陸上自衛隊の現地情報隊が身分を隠して市民らに接触し、思想信条や個人情報を収集していたという。記事を読む限り、それだけでも十分に衝撃的な話である。だが、私が最も引っ掛かったのは別の部分だった。
隊員ごとにアフリカや東南アジアの特定国が担当として割り振られ、その国の出身者や日本人研究者らと接触していたという記述である。私はそこで新聞を持つ手が止まった。
なぜアフリカなのか。なぜ東南アジアなのか。私はこの記述を読んで、市民監視という言葉より先に「人的ネットワーク」という言葉が浮かんだ。その国の出身者、その国を研究する研究者、その国と関わる人々を線で結び、一枚の地図として描こうとしていたのではないか。
これは国内治安組織の発想ではないだろう。むしろ海外で何かが起きたとき、その国を知る人間、その国に影響力を持つ人間、その国と接点を持つ人間を把握しておこうという発想に近い。
活動家の思想信条を知りたいのであれば、わざわざアフリカや東南アジアの国別担当を置く必要はない。そうではなく、その国につながる人物、その国を研究する人物、その国について語る人物を把握しようとしていたと考える方が自然だろう。
さらに言えば、その中から将来の情報提供者になり得る人物、あるいは現地情勢を知る協力者になり得る人物を探していた可能性もある。情報機関にとって人的ネットワークとは、単なる名簿ではない。いざという時に機能するかもしれない資産だからである。
しかし、だとすればこれは単純な市民監視の話ではない。そこには「敵を探す」という発想ではなく、「使える人間を探す」という国家安全保障の発想がある。
活動家を追うという話ではない。国を見るという発想である。実際、記事に登場するのは「反政府活動家」ばかりではない。その国の出身者であり、研究者であり、飲食店経営者である。つまり、「何をした人か」ではなく、「どこにつながっている人か」を見ていたようにも読める。
むしろ私が気になったのは、思想信条や性的嗜好が記録されていたことである。
情報機関にとって、それは単なる個人情報ではない。人物評価の材料である。誰と親しいのか。誰に影響を受けるのか。どこに弱点があるのか。どんな価値観で動く人間なのか。その人物を理解し、場合によっては働きかけるための情報である。
それらの情報が、誰を信頼できるのか、誰が影響力を持つのか、誰と誰がつながっているのか、そんな判断材料として集められていたとすれば、話はまったく違って見えてくる。私が本当に気になるのは、情報を集めた人たちの頭の中にあった世界地図である。そして、その地図の上に人を配置していたのではないかということである。
私はかつてドキュメンタリーの撮影でイランを訪れたことがある。
ホテルに滞在していると、不思議な感覚を覚えた。電話交換手、フロントマン、ロビーで新聞を読んでいる老人、入り口付近を走り回る子ども。誰が監視役なのか分からない。いや、おそらく特定の誰かではない。その場所にいる人々が、それぞれ人的ネットワークの一部として機能していたのだろう。国家は必ずしも秘密警察だけで情報を集めるのではない。人と人とのつながりの中で情報は集まる。
人は人を見る。
しかし情報組織は、人を人として見ない。ネットワークとして見る。情報源として見る。将来使える接点として見る。
もし今回の記事が示しているものがそうした発想だとすれば、問題は監視そのものではない。
人間が人間ではなく「ノード」として整理されていくことの方だ。
記事には答えが書かれていない。だが、断片は書かれている。
アフリカ。東南アジア。研究者。飲食店経営者。朝霞駐屯地。
それらを並べてみると、私には単なる市民監視の話には見えない。そこには国家が世界を見るための、もう一つの地図が透けて見える。
そして、その地図の上では、研究者も飲食店経営者も市民運動家も、一人の人間としてではなく「つながり」として配置されている。
私が本当に怖いと思ったのは監視ではない。
人が人としてではなく、ネットワークの一部として見られていることなのである。
今日のVoicyは、ドキュメンタリー撮影で訪れたイランの不気味で怖い話、そして事実は小説より奇なりと思うことについてお話しします!
#100 『VIVANT』より不気味だったイランでの体験
https://voicy.jp/channel/1027821/8399811
「リアルタイムニュースNAVI」HPより



市民カフェの際にも外国のホテルで盗聴などされたお話をしてらして「怖っ!」と思い、印象に残っていました。いやはや、、よくぞ今までご無事でいらっしゃいました!
そしてVoicy100回達成おめでとうございます☆彡
rk様
コメントありがとうございます。
本当に、自分でもよく生きているなと思います。
正直、何度命が危ないと思ったことか・・・。
Voicyは100日連続なんですよ!
すごくないですか?褒めてください(笑)。
田淵 拝