【今日のタブチ】「評価が下がる」ことを恐れて「ブラックバイト」を告発しない~Netflix『ブラック・ミラー』が示唆する「ランク社会」
東京新聞が「スキマバイトの隙間」という特集記事を展開している。以前、このブログでも紹介したが、とても読みごたえがある。記者の矜持ともいえる「体当たりルポ」が見事だ。
そのなかに、東京都が2024年12月1日早朝から開催した自転車イベント「GRAND CYCLE TOKYO レインボーライド2024」の設営のスキマバイトをした男子高校生の話が載っていた。男子高校生は、そのスキマバイトの仕組みに疑問を持ち、バイト現場で近くにいた50代くらいの男性ワーカーに意見を聞いた。するとその男性は「会社側から評価下げられるから、もめるようなことはしない」と答えたという。この男性はスキマバイトを掛け持ちして生計を立てている。低評価を受けると会社から「ブロック」されその会社の仕事ができなくなるどころか、低評価は他の会社とのマッチングにも影響するからだと主張した。
評価が下がるのを恐れて、違法なスキマバイトを看過する。恐ろしいことだ。
この話を聞いて私はあるドラマを思い出した。最近、編集技師の加藤ひとみ氏に勧められて見ているNetflixの『ブラック・ミラー』シリーズ。新しいテクノロジーがもたらす予期せぬ社会変化を描くダークで風刺的なSFアンソロジーで、舞台は異なる現代や近未来の1話完結モノだ。
そのシーズン3に『ランク社会』という作品がある。Netflixの公式HPによると、ログラインは「SNSでの評価が日々の生活を支配する世の中で、何とか星の数を増やしたいレイシー。セレブな結婚式に招待され、点数を稼げると有頂天になるが…。」である。主人公の女性は、SNSで星が多い「高評価」を得るために涙ぐましい努力をする。しかし、それが逆にあだになって……というとてもシニカルで身につまされる内容だ。
私は「いいね」や「星」を得るために懸命に投稿したりもしないし、相手からの評価も気にしないつもりだが、それでも知らず知らずのうちに「他人からの見え方」を気にして記事やブログを書いたりしていないかと問われると、はっきり「NO」とは言い切れないところがある。すでにその段階で、「評価社会」に毒されているのだろう。
他者からの評価を気にして、真実の目を曇らせることになるとそれは恐ろしいことだ。「気をつけなければいけない」と肝に銘じたい。
「Filmarks」HPより