【今日のタブチ】和久田麻由子の無駄遣い――日テレ新報道番組『追跡取材 newsLOG』初回で露呈した強烈な違和感
日テレの『追跡取材 newsLOG』の初回を観た。
この番組は放送開始前から、様々な観点において話題を呼んでいた。
1.『真相報道 バンキシャ!』以来、局制作による24年ぶりの新しい報道番組であること
2.総合演出が、芸能畑の長かった五味一男氏であること
3.そして何より、メインキャスターが元NHKの和久田麻由子氏であること
1.は良しとして、2.に関してはクレジット上は「総監督」となっているが、「ニュース番組で、総監督って何だ?」と違和感を感じた人も多かったのではないだろうか。私もその一人だ。
3.に関しては、和久田麻由子氏が2026年3月末にNHKを退社してフリーアナウンサーに転身した最初の仕事ということで、大きな注目を浴びていた。ちなみに、元NHKアナウンサーが民放の報道番組メインキャスターを担当することは、フジテレビ系列の『Live News イット!』の青井実氏以来だという。
HPによると、番組のコンセプトは「記者LOGをたどる。真相に近づく」。「LOG」(ログ)は、記者の取材の記録を意味する。「ニュースは結論だけでなく、たどり着くまでのプロセスから見えてくる真相もある」と語るトーンは極めて熱い。それだけに、とても期待していた。
だが、正直言って期待外れだった。
初回の25日㈯の放送の冒頭のネタは、「トランプの本音に迫る」というもの。
記者を追うとトランプの本音がわかると銘打ち、ワシントン支局の増田記者などの取材の様子を追っていた。いわゆる「内輪ネタ」「楽屋ネタ」である。この肝いりのコーナーも20分強で終わり、山火事のニュースへ。そしてその後は、ニュースの話題に移ってしまった。トランプのコーナーは24分あまりで、そのうち、生放送のスタジオは10分弱。肝心の和久田アナの存在感も薄い。
NHK『未解決事件』で私を痺れさせてくれた、鋭い分析や言葉の選び方は、初回放送からはほとんど感じ取れなかった。だがそれは、和久田麻由子の問題というより、番組の設計の問題だろう。和久田アナは、即興的に場を回すタイプのキャスターではない。問いを立て、言葉を沈め、視聴者と一緒に考える――きわめて「NHK的」な報道者である。その資質を前提としないまま生放送に放り込めば、存在感が薄れるのは当然だ。いったい、演出や監督振りはどこに発揮されているのか。
五味一男氏といえば、『進め!電波少年』を思い出す人も多いだろう。即興性やぶっつけ本番を売りにしたその演出手法を、報道に持ち込もうとした意図は想像できる。だが、それは明らかに噛み合っていない。報道番組における「生」とは、行き当たりばったりを見せることではない。
実際、本番組は生放送である必然性がほとんど感じられなかった。それならば、いっそ生をやめ、編集された枠の中で、和久田アナにじっくりと考えを語らせる構成の方が、はるかに説得力を持ったはずだ。予定調和のVTRを追い、生であるがゆえに踏み込めない進行をするくらいなら、和久田麻由子という稀有な語り手の強みを最大限に生かすべきだった。
スポーツコーナーでは、髙木姉妹を取り上げ「記者が観てきたLOG」と大きく振りかぶるが、テレビ局なのだから取材映像を蓄積できているのは当たり前のことだ。
そもそも、「記者のLOG」を前面に押し出すという発想自体が、いまのテレビ報道の自信のなさを物語っているようにも見える。事実や分析だけでは視聴者を納得させきれない。だから「ここまで取材しました」「こんな苦労をしています」というプロセスを見せることで、理解や共感を得ようとしているのではないか。だが、それは本来、報道の補助線であるべきもので、主役ではないはずだ。
そんななかでも、一つだけ成果があった。
映像制作やジャーナリズムを学ぶ立場から見ると、今回の『追跡取材newsLOG』初回は、ある意味で格好の教材でもある。強いコンセプトを先に掲げ、それに既存のニュースフォーマットを無理やり当てはめたとき、現場の取材や語りはどう歪むのか。その結果、何が見え、何が見えなくなるのか。本番組は、その過程をほぼ無防備な形で露呈させてしまった。
トランプを取材できず、トランプを取材する記者を取材するという“苦肉の策”や会見場でも席がなく隅に追いやられる様子を見ると、いかに日本がアメリカにとってプライオリティが低いかがよくわかる。アメリカは、日本など眼中にないのだということが手に取るように理解できた。この状況を見ても、日本の政権中枢はトランプ氏にすり寄る姿勢を変えないのだろうか。
日本は、もっと自国の立場や置かれている地位をよく認識したほうがいい。そしてアメリカが日本をどう観ているのかをしっかりと分析したほうがいいのではないだろうか。そう思わせられた。
いずれにしても、初回の『追跡取材 newsLOG』は期待外れと言わざるを得ない。
番組側は「記者のLOG=透明性」を掲げているが、少なくとも初回を見る限り、その狙いが視聴者に十分伝わっているとは言い難い。画面に映し出されるのは、記者が動き、悩み、右往左往する姿ばかりで、「だから何が、どこまで分かったのか」という核心部分が弱い。結果として視聴者は、“記者を見せられている”だけで終わってしまう。
さらに言えば、「取材できなかったこと」や「迫れなかった現実」を、「取材の工夫」や「プロセスの可視化」にすり替えてしまってはいないだろうか。その瞬間、LOGは透明性ではなく、“免罪符”になってしまう。
このままだと、さらにテレビは信頼を失い、“オワコン”への道を突き進むだろう。次回以降、この番組が挽回できるかどうかは、同時に、テレビ報道が自らの立ち位置を取り戻せるかどうかの試金石でもある。
「番組公式Instagram」より


