【今日のタブチ】〈聖イグナチオの巡礼宿〉奈留島に新しい文化拠点が生まれた―かくれキリシタン研究とインバウンド巡礼の可能性

このブログでお知らせしたように、一昨日24日㈮から今日まで、奈留島フィールドワーク研究の撮影に出かけていた。先ほど帰宅し、片付けも終えて、ようやく一息ついたところだ。
今回の奈留島滞在も、実りの多い「かくれキリシタン」研究となった。

巡礼宿「Albergue San Ignacio(アルベルゲ・サン・イナッショ)」の落成式は盛況だった。五島市の市長も駆けつけており、行政としてもこの巡礼宿に大きな期待を寄せていることが伝わってきた。

落成式を終えたあと、私は数人の関係者とともに、この巡礼宿で最初の体験宿泊をさせてもらった。実際に泊まってみて、率直に言って快適だった。巡礼宿をよく知る人は「世界の巡礼宿のなかでも、レベルはかなり高い」と話していたが、その評価にも納得できる。
発起人であり責任者でもある柿森和年氏は、スペインのサンティアゴ巡礼道に点在する巡礼宿をモデルにしたという。しかし、この宿は単なる再現ではない。随所に独自の工夫が施されており、そこに強く惹かれた。

玄関を入ると、すぐ右手にキリストを抱くマリア像ステンドグラスが迎えてくれる。外壁も内装も漆喰仕上げで、大工の仕事への矜持が感じられる。
巡礼者が集うリビングダイニングの中央にはストーブが置かれ、大きなテーブルと食器類が揃えられている。宿泊者は、それぞれ食材を持ち寄り、自由に料理をすることができる。柿森氏が「いずれは庭にトマトなどの野菜を植え、誰でも食べられるようにしたい」と語ってくれた言葉が、印象に残った。

廊下の突き当たりには、江上天主堂を描いた絵画が静かに掲げられている。その廊下を囲むように、部屋は三つ。「ペトロ」「イザベル」「アルメイダ」と名付けられた各部屋には象徴的な宗教画が配され、床はフローリング仕様で、落ち着いた時間を過ごせる空間になっている。

とりわけ心を打たれたのは、この巡礼宿が古民家を改築して作られている点だ。内装には、かつての住まいの面影が意識的に残されている。古くなればすぐに壊し、新築へと差し替えていく近年の風潮とは対照的で、エコロジーという意味でも、自然との調和という点でも、巡礼という行為にふさわしい佇まいだ
写真は以下のHPに掲載されているので、ぜひ見てほしい。
https://akogikodo.site/

今回の取材では、もう一つ、印象深い話を聞くことができた。巡礼旅を企画する「五島ピルグリムツアーズ」郡家孝之氏の話だ。郡家氏は、福江島で旅行会社を営む人物である。

郡家氏によれば、日本にある巡礼旅の企画会社はすべて、日本人巡礼者を海外へ送り出す、いわゆる「アウトバウンド」型だという。それに対し郡家氏は、海外の巡礼者を日本に迎え入れることを構想している。つまり、“インバウンド”の巡礼旅である。この試みは、日本では初めての挑戦になる。

かくれキリシタンの文化は、日本にのみ存在する固有の文化だ。その土地を実際に歩き、場の空気を体感することでこそ、伝わるものがある。それを海外の人びとが知ることには、大きな意味があると私は思う。
今後は、海外からの巡礼者が「アルベルゲ・サン・イナッショ」に宿泊し、巡礼道を歩く様子も記録していきたい。そして、その発信を通じて、かくれキリシタン文化の周知に少しでも貢献できればと考えている。

奈留島での今回のフィールドワークは、研究としても、発信の可能性という点でも、多くの示唆を与えてくれた。ここから、また新しい展開が始まりそうだ。そんな手ごたえを感じる旅だった。研究者として、素直にワクワクしている。

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