【今日のタブチ】「みかんはなぜ食べやすくおいしいのか」その“意外な答え”に衝撃……ヒマラヤの記憶とも繋がった、目から鱗の一冊『自然はすごい』
ネイチャーガイドであり自然観察家のノダカズキ氏著『自然はすごい いつもの道が美しく見える5つの視点』を読んだ。Amazonで見つけて、自然大好きの私は「面白そう~!」と即購入。
サイエンス作家・竹内薫氏の「キノコや街路樹など身近な「自然」を入り口に、動植物の生存戦略から人間の経済まで、読者を奥深くへといざなう。知的好奇心をおおいにくすぐる一冊」というコメントで知的好奇心をくすぐられた。Amazonの存在は書店を脅かすと批判されたりもするが、今回のように良書を見つけ出す入り口のシステムとしては“アリ”だと思った。
読み始めてまず、「みかんのUX/UI(ユーザーエクスペリエンスとユーザーインターフェイス)は神がかっている」という言葉に、ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。まるで「どうぞ人間様、食べてください」と言わんばかりのデザインだと言うのである。ユニークな視点だ。本書の凄いところは、竹内氏も評しているように、自然界の現象を単に生物学や科学で斬るのではなく、経営や生き残りといった“戦略”で斬っている点である。
木、石、金属、植物。私たちが使うあらゆるものは、結局のところ「地球にあったもの」からできている、という言葉にも納得。だが、言われてそうだと思うが、普段は意識しない、まさに「アンラーン」を促してくれるのが本書の優れた点だと感じた。
生きものが生き残るために工夫する基本戦略を「ブリコラージュ」というというのも、初めて知った。なかなか深い。コンクリートなどの人工物もすべて自然からできているというのは、目から鱗で、まさに今日から街を歩くときの視点や視界も違ってくると思わせられる。ノミガイというカタツムリは、「食べられる」という出来事を移動のチャンスに変えるという。まさに、逆転の発想である。
さらに驚きなのは、「プラスチックを分解できる微生物がいる」という事実だった。プラスチックを分解する微生物や酵素の研究は実際に進んでおり、自然界の知恵が環境問題の突破口になる可能性を感じさせる。
私が特に腑に落ちたのは、「桜」の語源のエピソードだった。一説には、「サ」は春に山から里へ舞い降りる“田の神”を意味し、その神様が一時的に降り立つ場所(蔵)がクラ。だからサクラだというものだ。だから、サクラは自然の声を聴くための装置であり、信仰の対象でもあった。原始宗教や精霊信仰に興味がある私にとっては、膝を打つ話だ。
私がドキュメンタリー撮影のため訪れていたヒマラヤにもサクラはある。取材の際に、現地の人々がサクラの木の下で豊作祈願をする儀式の様子を撮影した。ヒマラヤのサクラはヒマラヤザクラで、「ワイルド・ヒマラヤン・チェリー」とも呼ばれる。ヒマラヤ山脈周辺のネパール、インド北部、ブータン、中国南西部などの標高1,200~2,400mほどの地域に自生していて、色は日本のサクラそっくりだ。そして、ヒマラヤのサクラは春ではなく秋から初冬の11~12月に花を咲かせる。農閑期のこの時期に、人々はサクラの下で仮面舞踊を催し、神に捧げ、農作祈願をする。
サクラのルーツをヒマラヤ周辺に求める説もあるので、日本でサクラが信仰の対象であったとするノダカズキ氏の記述に、納得がいった。
そんなふうに、本書は新しい発見と懐かしい思い出を私に同時にプレゼントしてくれた。おススメの一冊である。



