【今日のタブチ】娘が父を尊敬する本当の理由――Mr.マリック氏が示した“挑戦し続ける生き方”
東京新聞で、ヒップホップシンガーのLUNA氏のインタビュー記事を読んだ。LUNA氏は、マジシャンのMr.マリック氏の娘として知られている。
記事のなかで語られていた父娘の関係が、とても印象的だった。
私は入社3年目の1989年当時、テレビ東京で『ポップシティX』という音楽番組を担当していた。当時はまだデビュー前で6人組だったSMAPがレギュラー出演していた時代だ。振り返れば、あの頃は私の青春そのものだった。SMAPと毎日のように会い、共に苦労し、共に笑っていた。*詳しくは後ほど、Voicyでお伝えしたい。
番組にはマリック氏も関わっていた。超魔術ブームの真っただ中で、日本中がそのパフォーマンスに驚き、魅了されていた時代である。
番組内ではマリック氏の「超魔術」をパロディ化したミニドラマやコントのコーナーがあり、メンバーは「宇宙から来た超能力者(X1号〜X6号)」のような設定で出演していた。
SMAPはまだデビュー前で、ブレイクする随分前だったが、マリック氏はまさに時代の寵児だった。私のような若造のADが気軽に話しかけたり、近寄ったりできる雰囲気や存在でもなかった。しかし、今回、LUNA氏の記事を読んで、私は別のマリック氏の姿を見ることになった。
記事のなかでLUNA氏は、父親について深いリスペクトを込めて語っている。
小学校時代、一時間も付き合って真剣に話をしてくれたこと。自分の夢に向かって進もうとするとき、「お前こそ夢に向かって突き進め」と背中を押してくれたこと。ニューヨーク留学を後押ししてくれたこと。父親として娘を応援し続けてきた姿が伝わってくる。
だが、私が最も心を動かされたのは別の部分だった。
それは、Mr.マリックさんが娘を叱咤激励するだけではなく、自分自身も挑戦を続けていたことである。
世の中には、子どもに対して「努力しろ」「挑戦しろ」と言う親は多い。学生に対して「創造性を持て」「現場へ出ろ」「作品をつくれ」と語る教員も多い。しかし、それを言う本人が挑戦をやめていたらどうだろうか。
言葉は届くかもしれない。しかし、本当の意味で人の心を動かすのは、やはり生き方なのだと思う。
マリック氏は長年にわたり第一線で活動を続けてきた。だからこそ、その背中を見て育った娘は父親を尊敬するのではないだろうか。父親が語った言葉だけではない。父親がどう生きたかを見ていたのだと思う。
私は大学で映像制作やメディアについて学生たちに教えている。クリエイターを目指す学生たちに対して、「挑戦しろ」「作品を作れ」「現場へ出ろ」と日々話している。しかし私は常々、自分自身にも同じ言葉を向けなければならないと思っている。だから私は今も、かくれキリシタンの研究フィールドワークを続けている。離島へ足を運び、人と出会い、話を聞き、撮影を行い、映像作品を制作する。一人でカメラや三脚を抱え、現場に出かけていく。
それは研究のためだけではない。自分自身がクリエイターマインドを失わないためでもある。創作の苦しさも、現場での失敗も、取材先との調整の難しさも、自ら経験し続けていなければ、学生たちに本当の意味でクリエイティブの面白さや厳しさを伝えることはできないと思うからだ。
次世代のクリエイターを育成するのであれば、自分自身もまたクリエイターであり続けなければならない。LUNA氏の記事は、一見すると父娘の温かな物語である。だが、私には、それ以上のものとして響いた。
親は子どもに何を残せるのか。教育者は学生に何を示せるのか。その答えは、立派な言葉ではなく、自ら挑戦し続ける姿なのかもしれない。
私も父親として、そして教員として、そうありたい。
今日のVoicyは、37年前のデビュー前のSMAPとの思い出の番組『ポップシティX』についてお話ししています。ぜひお聞きください!
#068 6人だったSMAPと超魔術ブームの時代
https://voicy.jp/channel/1027821/8275450
「婦人公論オンライン」より


