【今日のタブチ】『もう、パパ!』はホームコメディだと思っていたら完全にやられた──名優・堤真一に負けなかった原菜乃華が起こした奇跡
いやー、ドラマ『もうパパ!』にやられっぱなしだ。
主演は原菜乃華。父親役は堤真一。脚本は吉田恵里香である。
何度もこのブログで取り上げているが、正直に言う。私は最初、この作品を少し舐めていた。タイトルからしてホームコメディ。単に父と娘の軽妙なやり取りを描く家族ドラマだろうと思っていた。
ところが、とんでもなかった。特に11月1日放送の第5話「パパなんて、大っ嫌い」は強烈だった。
まず言っておきたい。
私は父親として、多良山良詫という人物をまったく支持できない。
娘を愛していることは分かる。しかし、その愛情表現は度を超えている。娘の交際相手を監視し、娘の行動に過剰介入し、自分の価値観を押し付けていく。本人は善意のつもりなのだろうが、私には到底共感できなかった。むしろ「それはダメだろう」と何度も思った。
だからこそ私は、堤真一という俳優の凄さに改めて感動した。
あれだけ最低の父親を演じながら、単なる悪役には見えない。見ているこちらを怒らせる。腹を立たせる。しかし目を離させない。それは、人物の愚かさや弱さを徹底的に表現しているからだ。視聴者に嫌われることを恐れず、役に殉じる。その覚悟はさすが名優である。
ところが、である。
ドラマを見終わった後、私の心に最も強く残ったのは実は堤真一ではなかった。
原菜乃華だった。
これには自分でも驚いた。
脚本の中心には父親がいるのかもしれない。父親の愚かさ、悲しさ、執着、そして愛情。その複雑な感情を描こうとしているのだろう。しかし、結果として視聴者の多くは紀子の側に立つ。少なくとも私は完全に紀子の味方だった。
父から逃げろ。負けるな。自分の人生を生きろ。そんな気持ちで見ていた。
それはなぜか。原菜乃華の演技が圧倒的だからである。
これまでの私は、彼女に対してどこか「かわいい女優」というイメージを持っていた。もちろん演技力はあった。だが、今回見せたものは、それをはるかに超えている。
父親への愛情。感謝。怒り。息苦しさ。逃げたい気持ち。それでも父を完全には嫌いになれない苦しさ。その複雑な感情を、表情や目線や間によって見事に表現している。
だから視聴者は紀子に感情移入する。脚本に誘導されたのではない。原菜乃華の演技によって感情を持っていかれるのである。
そして私はこのドラマを見ながら、あることを思い出していた。大学で学生と接している時のことである。
教員は学生に期待する。もちろん成長してほしいと思っている。だが、時としてその期待をはるかに超えてくる学生がいる。
「ここまでやるとは思わなかった」そう感じる瞬間がある。すると、その学生はさらに伸びる。本人の中で何かが変わるのだ。
私は今回の原菜乃華に、それと同じものを感じた。相手は堤真一である。日本を代表する名優だ。普通なら食われてもおかしくない。圧倒されても不思議ではない。
だが彼女は負けなかった。いや、むしろ何度も作品の中心に立っていた。
もしかすると、この役は当初、ここまで原菜乃華が前面に出る想定ではなかったのかもしれない。だが、彼女は期待以上のものを見せた。名優の気迫を真正面から受け止め、その上で対等に渡り合った。その結果、作品そのものの見え方まで変えてしまった。私はそう感じている。
だから私にとってこのドラマは、堤真一の名演を味わう作品であると同時に、原菜乃華が大きく飛躍した作品でもある。
いや、もっと言えば違う。
この作品で私は、「かわいい女優」として見られていた一人の若い演者が、名優への階段を駆け上がる瞬間を目撃したのかもしれない。
そんな気さえしている。それは、私が学生の著しい成長を目の当たりにするときと同じだ。
もし将来、「原菜乃華の転機となった作品は何か」と聞かれたら、私は迷わずこう答えるだろう。
『もうパパ!』である、と。
いやー、完全にやられた。次回が待ち遠しくて仕方がない。
今日のVoicyは、ドラマ『もう、パパ!』に学ぶ教育論、私が学生さんに何を伝えているかをお話ししたいと思います!
#098 名優・堤真一に負けなかった原菜乃華──『もう、パパ!』を見て学生たちの成長を思い出した
https://voicy.jp/channel/1027821/8376752
オリコンニュース・11月1日放送の第5話「パパなんて、大っ嫌い」より


