【今日のタブチ】外国人が増えることは本当に悪いことなのか?――中学生調査で見えた、メディアが「物語」を作り出す“不気味さ”

首都圏の公立中学生約2000人を対象にした東京大学の調査で、「外国人が増えることは社会にとって良いことが多いと思わない」と考える生徒が2025年には4割を超えたという。2022年には2割強だったことを考えると、わずか3年で倍近くに増えた計算になる。

興味深いのは、それだけではない。

これまでの調査では、ルールを重視する生徒ほど外国人増加に肯定的だった傾向があった。しかし2025年調査では逆転し、ルールを重視する生徒ほど外国人増加に否定的になったというのである。

もちろん、この調査だけで原因はわからない。しかし、私が気になったのは「外国人が増えることへの賛否」よりも、「なぜルールを重視する生徒たちの認識が変化したのか」という点だ。
記事ではその理由にまでは言及していない。だが、本当に大事なのはその理由を想像することだ。

そもそも多くの中学生は、自分の周囲の外国人を大量に観察し分析した結果として意見を形成しているわけではないだろう。外国人に関するイメージの多くは、ニュース、新聞、テレビ、YouTube、TikTok、Xなどを通じて獲得しているはずだ。そう考えると、一つの仮説が浮かび上がる。

近年、生徒たちの間に「外国人はルールを守らない」というイメージが広がった結果、ルールを重視する層ほど外国人増加に否定的になったのではないか。

もちろん、これは仮説であって断定ではない。しかし、もしそうだとすれば、次に考えなければならないことがある。

そのイメージはいったい誰が作ったのか、ということだ。

ここで私は、以前から違和感を抱いている『ガイアの夜明け』を思い出した。私はあの番組が嫌いなわけではない。むしろよくできた番組だと思う。だが、あの番組には独特の「物語の作り方」がある。
苦境に立つ企業がある。経営者や社員が奮闘する。新たな技術や商品を開発する。業績が回復する。そして最後は希望が見える。
もちろん、それぞれは事実である。しかし、視聴者が受け取るメッセージは、「経済活性化は良いことだ」「成長は望ましいことだ」「頑張る企業が日本を救う」という物語である。
反対に、「経済は必ずしも成長し続ける必要はないのではないか」「持続可能性のほうが重要ではないか」「小さくても安定した社会のほうが幸せではないか」といった脱成長的な考え方は、ほとんど登場しない。
存在しないからではない。番組が描く物語の外側に置かれているからである。
つまり、事実は事実なのだが、その事実をどう並べるかによって、人は特定の世界観を自然に受け入れるようになるということだ。

私は今回の外国人とルールの問題にも、似た構造があるのではないかと思う。
外国人による事件やトラブルが報じられる。それ自体は事実である。報道されるべき事実でもある。
しかし、外国人が地域社会で働き、学校で学び、税金を納め、日本人と変わらない日常を送っている姿はほとんどニュースにならない。
ニュースになるのは、問題が起きたときだ。
すると受け手の頭の中には、「外国人」ではなく、「問題と結びついた外国人」や「犯罪をした外国人」のイメージが蓄積されていく。
その結果、外国人が増える→ルール違反が増える→社会が悪くなる、という連想が形成される可能性がある。

私は、誰かが密室で陰謀を企てていると言いたいわけではない。しかし、メディアがその気になれば、人々の関心をある方向へ集中させることはできる。逆に言えば、別の側面を見えにくくすることもできる。これはメディア研究の世界では決して珍しい指摘ではない。
だから今回の調査結果を見て、私は「外国人が問題だ」とも、「外国人は問題ではない」とも思わなかった。

むしろ気になったのは、中学生たちはいつの間に「外国人とルール違反は関係がある」という物語を共有するようになったのか。そして、その物語はいったい誰によって語られてきたのか、ということだ。
テレビなのか。新聞なのか。SNSなのか。政治家なのか。あるいは、それらすべてなのか。
そして、それらがもし中学生という次世代を担う若者たちに刷り込みとしておこなわれているとすれば――そう考えると、空恐ろしさと不気味さを感じると同時に、日本の未来への不安を抱いてしまうのだ。
今回の調査は外国人問題を映しているようでいて、実はそうではない。私にはむしろ、日本社会においてメディアがどのように現実を切り取り、人々がどのようにその現実を理解していくのかを示した、興味深い調査結果のように見えるのである。
この調査結果を、私たちは単なる数字の変化として眺めて終わらせてはならない。本当に問われているのは、外国人の存在ではなく、人々の認識がどのように形成されているのかという問題だからだ。
気づかぬうちに社会全体が一つの物語を共有し、その前提の上で物事を考えるようになる。その構造こそが、私には何より不気味に思える。そして、その物語を最も無防備な形で受け取るのが次世代を担う子どもたちだとしたら、日本の未来に対して楽観的にはなれないのである。

今日のVoicyは、中学生の“外国人に関する”意識調査から私が想像し、妄想し、懸念したことをお話ししたいと思います。
#103 中学生はなぜ突然“外国人嫌い”になったのか?
https://voicy.jp/channel/1027821/8417327

「47NEWS」より

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