【今日のタブチ】女性労働者の43%が「生活できない」国――この数字の“異常さ”を放置してきたのは誰だ
女性労働者の4割以上が、生活できる水準の収入を得られていない。
全国労働組合総連合が行った全国調査で、年収350万円未満の女性労働者が43%を超えていることが明らかになった。
350万円という額は、「慎ましい生活」の目安ではない。家賃、光熱費、食費、医療費などを積み上げた「最低生計費」、つまりフルタイムで働く人が自立して暮らすための下限だ。
その水準に届かない人が、すでに4割を超えている。
しかも、この割合は急増している。
前回調査(2020年)から12.3ポイントの上昇。コロナ後、景気は回復していると繰り返されてきたこの数年間で、である。
ここで見誤ってはいけないのは、これが「一部の不安定層」の話ではないという点だ。
正規雇用の女性でも、最低生計費未満で働く割合は増えている。無期雇用の非正規・非常勤では、半数以上が年収200万円以下だった。
働いていないから貧しいのではない。
働いていても生活できない人が、制度的につくり出されている。
この数字が意味するのは何か。
ジェンダー格差是正の努力が足りない、という話ではない。それ以前の問題だ。
是正されていないのではなく、放置され、悪化したという事実を示している。
では、その間、何が行われてきたのか。
2020年以降、「女性活躍」「賃金格差の見える化」「両立支援」という言葉は溢れていた。制度改正もあった。しかし、所得分布の底を押し上げる力にはなっていない。
賃金の決め方そのものには手を付けず、物価だけが上がり、生活費が膨らみ、その負担が最も弱い立場に集中した。その帰結が、この43%だ。
国際比較をすれば、日本の異常さははっきりする。
OECDの統計で、日本の男女賃金格差は22%前後。先進国でも最悪水準だ。北欧諸国は一桁台、フランスやドイツでも10%前後に収まっている。
額面の年収は国ごとに違うが、「同じ条件で働いた場合に、どれだけ差がつくか」という点で、日本は明確に突出している。
なぜ、ここまで差が固定されるのか。
第一に、日本では、賃金が「どんな仕事をしているか」よりも、「どんな働き方ができるか」で決まってきた。仕事の中身や責任の重さより、長時間働けること、転勤を断らないこと、会社にすべてを合わせられることが高く評価される。そのモデルに乗れる人だけが昇給し、乗れない人は、同じ会社の正規雇用であっても賃金が伸びない。
第二に、非正規雇用が「例外」ではなく「最初から想定された使い方」になっていることだ。
女性については、いずれ結婚や出産、介護で働けなくなるかもしれない、という前提で雇用や配置が決められる。その結果、無期雇用であっても、賃金が上がらない働き方に固定され、低賃金から抜け出せない層がつくられていく。
そして決定的なのは、最低賃金そのものが、人が生活できる水準を下回っていることだ。
日本では、制度の上で「フルタイムで働いても自立できない賃金」が認められている。
この前提がある限り、努力が足りないという議論は成り立たない。
これが日本に特有の状況だとすれば、文化ではなく制度の問題だ。
必要な対策は、すでに明白だ。
最低賃金を、生計費から逆算した水準に引き上げること。
同一価値労働同一賃金を、理念ではなく拘束力のある規則として実装すること。
非正規・非常勤という区分が、恒常的な低賃金装置になる構造を壊すこと。
ケア労働を個人、とりわけ女性に押し付けないこと。
どれも新しい提案ではない。
新しくないから、先送りにし続けることができた。
その結果、女性労働者の4割が「働いても生活できない」位置に置かれている。
43%という数字は、同情を誘うための数字ではない。
この社会の賃金と雇用の設計が、誰を支え、誰を削ってきたのかを、これ以上なく明確に示している。
この数字をどう受け止めるのか。
「仕方がない」と流すのか、それとも異常だと捉えるのか。
その態度の中に、この国の本音がある。
「PITキャリアBlog」HPより


