【今日のタブチ】アメリカがイランの核施設を攻撃~「民間」への影響を懸念する:1994年にドキュメンタリー撮影で訪れた「砂漠の真珠」テヘランの記憶

アメリカ軍が6月22日に実施したイランの核施設への攻撃は、地下深くにある3か所の核関連施設(フォルドゥ、ナタンズ、イスファハーン)を標的としたもので、主に軍事・核関連インフラに限定された精密攻撃だったとされている。正直言って、トランプ氏の勇み足、あまりにもイスラエルへの加担が過ぎて、あきれるばかりだ。もちろん、この火種が世界戦争に発展しないかということは心配だが、現時点で私が懸念するのは、「民間への影響」だ。
イラン原子力庁の発表によれば、攻撃による放射線漏れや周辺環境への影響は確認されておらず、現時点ではモスクや民間施設への被害についての具体的な報告は出ていない
思い出されるのは、ドキュメント特別企画 世界バスの旅『若林豪親子・秘境カラコルム街道へ〜1200キロに挑む親子の絆』の撮影で、イランを訪れた1994年のことだ。
イランの首都テヘランはモスクが建ち並ぶ美しい街だった。標高1,000〜1,800メートルの高地にあるため、夏は暑く乾燥し、冬は雪が降ることもある。まるで砂漠の中のオアシスのような都市である。私が勝手に名付けるとしたら「砂漠の真珠」といったところか。
そしてなによりもモスクが美しい。「静寂の芸術」とはよく言ったものだ。モスクは単なる宗教施設ではなく、ペルシャ建築の粋を集めた芸術作品だ。静寂の中に響く「アザーン」の声、ステンドグラス越しに差し込む朝の光、人々が焚くお香のムスクの香り、そして訪れる人々の敬虔なまなざし—それらすべてが、当時の私にとっては初体験で、カルチャーショックだった。
ゴレスターン宮殿の敷地内にあるモスクは、ガージャール朝時代の建築美を今に伝える場所で、壁一面に施された鏡張りの装飾が光を反射し、まるで万華鏡の中にいるような幻想的な空間を生み出していた。テヘラン郊外にあるホッラムシャフルのマスイード・モスクは、当時はまだイラン・イラク戦争の影響で修復途中だったが、現在は完了し、青と金のタイルが織りなす幾何学模様が圧巻で、特に夕暮れ時には空の色とモスクのドームが溶け合い、まるで絵画のような光景になると聞く。
イランでほかに思い出深かったのは、以下の出来事だ。
1.撮影中はリエゾンオフィサーという政府から派遣された「調整役」「仲介役」のような人物がぴったりとついてきた。国営放送IRIB(イラン・イスラム共和国放送)のプロデューサーという人物が派遣されてきた。まだ血気盛んだった私は、よく「あれは撮れない」「なぜだ!」とケンカしたものだった。
2.「ラマダン」というイスラム教の断食月にあたっていたので、人前でタバコを吸うのもタブーだった。スタッフがロケ車の窓を開けてタバコを吸っていたら、通りかかった人に偉い剣幕で怒られたことを覚えている。知らなかったとはいえ、申し訳ないことをした。
3.滞在中は監視の目にさらされていた。ホテルの館内電話でスタッフと話すときも、なんだか盗聴特有の電子音が聞こえてきたり、出かけて帰ってくると荷物の位置が微妙に変わっていたり、鍵をかけているはずのスーツケースが開けられた形跡があったりした。
4.そして強烈な記憶として残っているのが、ホテルに掲げられていた巨大な垂れ幕だ。そこには「イランの敵、アメリカ」と人々を鼓舞するような大きな文字がでかでかと書かれていた
憎しみは憎しみを生む。テヘランのそんな記憶を思い出しながら、「目には目を」とならないことを祈る。断食でつらくても笑顔を絶やさない人々。子どもたちの屈託のない笑い声。その「日常」という幸せが蹂躙されることのないように

「NHKニュース」より

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