【今日のタブチ】“ヒマラヤの国”ネパールの「若者革命」に日本は何を学ぶべきか──RSP圧勝が示す政治の未来

先日、本学・桜美林大学の最寄り駅・町田にあるネパール料理店「ネパール餃子酒場そるてぃ」に行った。
助手の先生の一人がこの3月で退任されるため、その送別会だった。この助手の先生は、私が入職するのと同時に、2023年に着任されたので、大変お世話になったし、入職同期として思い入れも深い。なかなかじっくり話す機会がなかったのだが、チベットやネパールで親しまれているネパール風の蒸し餃子モモやおいしいカレーをいただきながら、いろんな話ができてよかった。

この店は、私が選んだわけではないのだが、なかなかよかった。働いている人は調理人も含めネパール人で、全員ポカラ出身だという。ポカラは、ヒマラヤ山脈アンナプルナ連峰のパノラマが広がる美しい地方都市で、私も大好きな場所だ。このように、日本への出稼ぎの方々は、同じ地方出身者同士でコミュニティを形成してお互い助け合って暮らしている。

そんなヒマラヤの国、ネパールで政権交代が確実になった。5日に開票された総選挙で、新興の国民独立党(RSP)が小選挙区165議席のうち125席を獲得したという報道が出ている。
ネパール国首相には、RSPの首相候補でラッパーのバレンドラ・シャハ前カトマンズ市長が就く可能性が高い。昨年9月には、10〜20代のZ世代の若者らによる大規模な反政府デモが繰り広げられ、当時のオリ首相を辞任に追い込んだ。RSPはそんな政治の改革を望む若者たちの熱狂的な支持を受けている。シャハ氏は35歳だ。

シャハ氏は、もともとヒップホップの世界で知られたラッパーであり、構造エンジニアという異色の経歴を持つ。政治の世界では2022年、市民生活の課題に切り込む姿勢を掲げ、既成政党の候補を破って無所属でカトマンズ市長に当選した。市長時代にはゴミ処理問題や交通管理改革など、停滞していた都市行政に手を入れた実績がある。
そのうえ、昨年のZ世代主導の反政府デモでは、腐敗政治に怒りを募らせる若者たちの声に真っ先に寄り添い、オリ政権退陣を迫る動きの象徴的存在にもなった。貧困・失業・腐敗をテーマにした曲で若者に支持されてきた背景もあり、「世代交代」を掲げるRSPの顔として強い信頼を集めている。

私はネパールへ何度も訪れている。合計10回は超えているだろうか。首都カトマンズからもヒマラヤが見え、赤レンガの建物はノスタルジーを掻き立ててくれる。だが、当時は正直言ってそんなに治安がいいとは言えなかった。警官は何かといえば賄賂をねだるし、街でいつテロが起こってもしかたがない状況だった。ちょうど国王が暗殺されるなどの事件があって、王政から民主主義への移行時期だったこともある。政治の腐敗と格差が蔓延していた。

ネパールでは2001年に国王ビレンドラが王族殺害事件で暗殺され、その後の混乱の中で王政は急速に求心力を失い、マオイストとの内戦も深刻化した。2006年の人民運動によって王政は実質的に瓦解し、2008年に正式に廃止されて共和制へ移行した。しかし、その後も政権は短命の連続で、既成政党の腐敗や利権構造が温存され、若者の失望は深まる一方だった。こうした長年の閉塞が蓄積した結果、昨年のZ世代による反政府デモを経て、今回の総選挙では既成政治を見限った若者たちがRSPを圧倒的に支持する流れにつながったのだ。

若者たちが選んだ未来が、ようやく動き出した。RSPとシャハ氏が、その扉をこじ開ける存在になるだろうと私は期待している。
そして、こうした変化を「遠い国の自分には関係ない出来事」として済ませるわけにはいかない
ネパールの若者たちは、本気で政治を動かしている。
その姿は、政治への関心が薄れた私たちの国に、明確な警告を突き付けている。

「日本経済新聞デジタル」より

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