【今日のタブチ】Z世代は本当に“銃をとる世代”になるのか――丹羽宇一郎が突きつける、「ターミネーター」が現実になる日本の未来

月一で担当している毎日新聞の書評欄で、丹羽宇一郎著『Z世代は戦後初めて銃をとる世代になるかもしれない』(東洋経済新報社)を取り上げた。

丹羽氏は、伊藤忠商事の社長・会長を歴任し、初の民間出身駐中国大使を務めた人物だ。それだけに、豊富な経験と知見に裏打ちされた言葉には説得力がある。そして何より実感したのは、丹羽氏がZ世代、さらにはその次の世代の若者たちのことを、心の底から心配しているという事実だった。

丹羽氏は、伊藤忠商事の社長時代、業績をV字回復させたことで広く知られている。しかし、それ以上に印象深いのは、次世代や若手社員へのまなざしだ。リストラありきの経営が当然視される時代にあっても、「会社は社員とその家族のためにある」という考えを繰り返し示し、雇用を守ることを最優先にした。短期的な数字よりも、人を消耗させない経営を選んだ。その姿勢は、若い社員たちにとって、確かな拠り所だったはずだ。

また、中国大使を務めていた時代は、日中関係が最も冷え込んだ局面と重なる。尖閣諸島をめぐる緊張、凄まじい反日世論、排他的なナショナリズムが渦巻くなかで、外交の最前線に立たされた。机上の理屈では通用せず、一歩判断を誤れば現実に火が噴く。そんな「火線」の只中で積み重ねた経験があるからこそ、丹羽氏の言葉は抽象論に逃げず、生々しく、鋭い。

ちょうど原稿を書いているとき、イランをめぐる問題が勃発し、ホルムズ海峡への自衛隊派遣の可能性が取り沙汰されていた。幸いにも最悪の事態は避けられたが、いつ、どこで、同じ局面に直面するかは分からない。日本はすでに、殺傷兵器の輸出に踏み込み、戦車やミサイルといった、本来“越えてはならない領域”に足を踏み入れてしまったからだ。

記事には書かなかったが、本書を読んでいるあいだ、映画『ターミネーター』のシーンが何度も頭をよぎった。親や祖先の世代が始めてしまったロボットと人類の戦争。その“後始末”を引き受け、銃を持って戦場に立たされる若者たち。あの光景は、もはやフィクションではない。

自分たちはその頃にはもう死んでいるから関係ない――。そんなふうに思っている人はいないと信じたいが、子どもや子孫がいる人も、いない人も、同じ次元で考える問題だ。
戦争をするのか、しないのか。
戦争の可能性を受け入れるのか、否定するのか。

そのジャッジメントには、「日本の未来」という、取り消しのきかない責任がのしかかっている。

記事では、本書で丹羽氏が指摘している「メディアの役割」について、私が在籍してきたテレビメディアにおける同調圧力にも言及している。ネットでは有料会員しか読むことはできないが、もし可能であれば、全文を読んでみてほしい。
https://mainichi.jp/articles/20260404/ddm/015/070/006000c

「毎日新聞・書評欄」より

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