【今日のタブチ】7月クールに見つけた「地上波ドラマの鉱脈」――蒼井優と松本若菜に共通する“引き出しの多さと深さ”
TBS『VIVAVT』の初回放送を終え、2026年7月クールのドラマがほぼ出揃った。
以前のブログにも書いたが、最近の地上波は、配信へのIP活用を意識して、タイムワープなどの奇抜な設定ものが多いイメージだ。
そんななか、私が注目するのは、2作品。
TBS『Tシャツが乾くまで』と同じくTBSの『君の好きは無敵』だ。奇しくも、私が選んだ2作品はいずれもTBSドラマだった。
先日、新聞を読んでいたらコラムニストの吉田潮氏も同じようなセレクションをしていた。
『Tシャツが乾くまで』は、何と言っても蒼井優氏の繊細な演技が見ものだ。同時期にNetflix『ガス人間』も観ていたが、そこで演じる大胆で奔放な女性とは対照的に、本作ではどこにでもいる普通の女性を実に自然に演じている。その振れ幅の大きさに驚かされた。『ガス人間』と『Tシャツが乾くまで』――あえてこの2つを並べて見るからこそわかる、蒼井氏の引き出しの多さと深さには感服だ。
そして、脚本家が合間に挟み込んでくる「夫婦あるある」がたまらなくリアルだ。夫婦というのはどういう存在かということを改めて考えさせられる作品だ。“一番近くにいる他人”――わかっているようで、実は何も相手のことは知らないのではないかと、わが夫婦にシンクロして考えてしまった。そういった意味では、視聴者をあたかも自分の生活と同一であるかのような錯覚に落とし込む““実生活イマーシヴ”型ドラマと言えるだろう。
中島歩氏という俳優は、私のなかではそんなに評価は高くなかった。何となく表現がフラットで、さらっとした演技が好きではなかった。だが、このドラマの中島氏を観て、見方が変わった。自分の妻が不倫していたのではないかと疑う夫をうまく演じている。信じたくない、だが、信じてしまう。そんな複雑な心境を細やかに演じている。それが、ある種、端正で長身の彼だからこそ、痛々しさとしてよく伝わってくる。恐らく私のように評している人はほかにもいて、それを中島氏本人も認知しているだろう。もしそうした評価を逆手に取って今回の表現にたどり着いたのだとしたら、なかなかのものだ。
そして特筆すべきは、松山ケンイチ氏だ。またホリプロはやってくれた。『リブート』のときもそうだったが、主演級の役者を“美味しい脇役”として惜しげもなく使う。これはなかなかできることではない。松山氏が出てくると、ついそちらに目が行ってしまう。役者としての格と存在感が、ドラマ全体に厚みを与えている。
『君の好きは無敵』は何と言っても松本若菜氏がいい。若い人たちはよく知らないだろうが、『シャイニング』のパロディーシーンには大笑いした。最近はシリアスな役も多いが、変顔や奇妙なキャラといったコメディ要素が楽しい。
松本氏は私がプロデュースしたドラマ『あまんじゃく 元外科医の殺し屋 最後の闘い』で悪役を演じているが、そのときの振り切り方もすごかった。そのころは今ほど売れてはいなかったが、「なかなかの俳優だな」と思っていたら、見る見るうちにスターダムにのし上がった。当時感じた役者魂は、いまも変わらない。
主題歌の星野源氏、エンディングにダンス風の振り付けが入るなど、『逃げ恥』を彷彿とさせる演出もニクい。そしてこちらにも、意外と残酷なキャラビジネスの裏側のネタが随所に挟み込まれる。こういった小ネタを頻繁に入れてゆくという手法は、視聴者を飽きさせない効果とリアリティを演出する意味で、いまや地上波ドラマでは極めて重要な要素になっている。
7月ドラマは、良いも悪いも、ベテラン女優が勢揃いしたクールだ。小池栄子、比嘉愛未、仲里依紗、内田有紀、少し若いが趣里、そして、上記2作品の蒼井優と松本若菜。観ているだけで楽しく、そして頼もしく思えてくる。
ウーマンエンパワメントは時代を象徴している。彼女たちの今後の健闘に期待したい。
地上波ドラマが苦戦していると言われて久しい。しかし、この夏の作品群を見ていると、まだまだテレビは捨てたものではない。クリエイターたちはとても頑張っている。少なくとも私は、この2作品の続きが早く見たい。
両者ともTBS番組公式HPより


