【今日のタブチ】震災に寄り添う熊本出身歌手たち――私が40年前の結婚式中継で見た水前寺清子氏の素顔

熊本県で震度7を観測した地震を受け、熊本県出身の歌手たちが次々と被災者へ応援メッセージを寄せている。とても素晴らしい取り組みだと思う。
森高千里氏は自身の公式サイトで、「かなり揺れて怖かったと聞きました。暑い中、停電、断水など起きている地域もあるようです」「どうか安全を確保して過ごせますように」と、故郷を気遣う言葉を送った。
水前寺清子氏は、代表曲「三百六十五歩のマーチ」の「しあわせは歩いてこない だから歩いてゆくんだね」という歌詞に触れながら、「どうか無理をなさらず、ご自身の歩幅で一歩一歩前へ進んでください」と呼びかけた。
島津亜矢氏も熊本弁で「がんばらなんたい熊本!」とエールを送っている。
さらに、元SMAPの草彅剛さん、香取慎吾さん、稲垣吾郎さんによる「新しい地図」は、日本財団と運営する基金「LOVE POCKET FUND」を通じて被災地支援プロジェクトを立ち上げた。10月末まで寄付を受け付けるほか、自らも3000万円を寄付するという。なかなかできることではない。

こうしたニュースを見ていて、私はある出来事を思い出した。テレビ東京に入社して間もないころのことだ。
私は水前寺清子氏の結婚式中継の担当スタッフの一人だった。
1989年2月28日、水前寺氏は熊本市の水前寺公園内にある出水神社で挙式した。芸名の由来となった水前寺の地で結婚式を挙げるのが長年の夢だったという。地元からは5000人を超える人々が祝福に集まった。
当時の私は駆け出しのADだった。先輩ディレクターから、「中継本番の日は、礼服を来ていないとダメだ」と言われ、慌てて略礼服のダブルを購入した。
社会人になって最初に買ったまともな礼服だった。実はその礼服、いまでも使っている。40年近く・・・物持ちが良すぎだろう(笑)。
冠婚葬祭のたびに袖を通すのだが、そのたびに熊本でのあの日を思い出す。

1980年代後半は芸能人の結婚式テレビ中継全盛期だった
郷ひろみ氏と二谷友里恵氏の披露宴中継は47.6%、森進一氏と森昌子氏は45.3%、渡辺徹氏と榊原郁恵氏は40.1%、神田正輝氏と松田聖子氏は34.9%という、いまでは考えられない高視聴率を記録している。
いまならSNSや動画配信で本人たちが発信する。しかし、当時は違った。結婚式の様子を全国の視聴者が見るにはテレビ局の中継しかなかったのである。

当然、現場は大騒ぎだった。私はまだ業界の右も左もわからず、会場内を走り回っていた。
そんな末端のADにまで、水前寺氏は気を配ってくれた。
「大丈夫? 大変だよね」
そんな言葉をかけてくれたのである。
正確な文言までは覚えていない。ただ、新人ADの私を気遣ってくれたことだけは、40年近く経ったいまも忘れていない。
トップスターでありながら、周囲のスタッフにも目を向ける。そういう人だった。

だから今回のニュースで紹介された水前寺氏のコメントを読んだとき、私は妙に納得した。
あれは建前ではない。故郷を思う人の言葉なのだろう。
熊本で生まれ、熊本を芸名にいただき、結婚式も熊本で挙げた。そして80歳になったいまも熊本を案じ続けている。その言葉には長年変わらない故郷への思いがにじんでいるように感じる。

熊本出身の歌手たち、そして「新しい地図」の支援活動が、被災された方々の力になってほしいと願っている。
そして私自身も、あの日の出水神社で見た水前寺清子さんの姿を思い出しながら、熊本の一日も早い復旧を祈りたい。

「テレ朝NEWS」より

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