【今日のタブチ】ドラゴンボール遊園地開設に抱いた違和感――政治はいつから“ファン活動”になったのか

昨日、私は厚生労働省の映画『ママがもうこの世界にいなくても 私の命の日記』と、法務省のNetflixリアリティシリーズ『ラヴ上等』とのタイアップ中止について書いた。
行政が自らの理念や政策を語るよりも、人気コンテンツの力を借りて共感を得ようとしているように見えたからだ。
そんな翌日、今度はフランスで『ドラゴンボール』の世界を再現した巨大テーマパークが建設されるというニュースを目にした。もちろん、ドラゴンボールファンにとっては朗報だろう。鳥山明さんの作品が世界中で愛され続けていることを考えれば、不思議な話でもない。私はドラゴンボールを批判したいわけではないし、この計画そのものに反対するつもりもない。

だが、記事を読んでいて、私は思わず「またか」と感じてしまった。

私が引っ掛かったのはテーマパークではない。その「語られ方」である。
報道によれば、この構想はフランスのマクロン大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子がドラゴンボール談義で意気投合したことがきっかけになったという。私には、このエピソードが妙に印象的だった。
もちろん、事実なのだろう。しかし私は少し穿った見方をしてしまう。
フランス国内では、年金改革などをめぐってマクロン政権への反発が続いてきた。政治家として決して楽な立場にいるわけではない。そんな中で、「私はドラゴンボールのファンです」というメッセージは、大統領という遠い存在を一気に身近な存在へと変える
政治家ではなく、一人のファン。権力者ではなく、私たちと同じポップカルチャーを愛する人。私には、このニュースがそうした大衆性の演出として利用されているようにも見えてしまった。
もちろん、これは私の見立てである。マクロン大統領本人に聞いたわけではない。だが、私は政治家が「私もファンです」と語り始めた時には少し警戒する。なぜなら、その言葉は時として政策の説明よりも大きな力を持ってしまうからだ。
本来であれば、テーマパーク計画について語られるべきなのは雇用効果や経済効果のはずである。
どれだけの観光客を呼び込むのか。どれだけの雇用を生むのか。地域経済にどれだけ貢献するのか。本筋はそこだろう。
ところがSNS時代には、そうした話よりも「ドラゴンボール好き同士が意気投合した」という物語の方が拡散される。そして政治家たちも、そのことをよく知っている。
だから政策ではなく共感を語る。理念ではなく趣味を語る。数字ではなくファン心理を語る。
私はそこに、昨日の省庁ポスター問題と共通するものを感じる。厚労省も法務省も、なぜその政策が必要なのかを説明するより、人気コンテンツの力を借りて人々に届こうとした。今回のニュースも同じだ。
行政は人気作品に寄り添う。政治家はファンを演じる。方法は違うが、根底にある発想は似ているように見える。

自らの言葉や政策だけでは人々の心を動かせない。だからエンタメの力を借りる。だからファン文化に接近する。
私は、そこに一種の焦りを感じるのである。
ドラゴンボール遊園地は、おそらく成功するだろう。世界中のファンが訪れるかもしれない。それはそれで素晴らしいことだと思う。
だが、そのニュースを読んだ私は、テーマパークそのものよりも、「私はファンです」という物語が政策や政治の前面に出てくる時代の方が気になった。
昨日の省庁ポスター問題もそうだった。そして今日のドラゴンボール遊園地の話もそうだった。
気が付けば、政治も行政も、理念や政策を競うのではなく、人々の共感を競うようになっている。
私は、その先にあるものが少し怖い。

政治がファン文化にすり寄り始めた時、私たちは政治を評価するのではなく、「推し」を応援するような感覚で政治を見るようになるかもしれないからだ。いや、もうすでにそうなっているのかもしれない。

「Sortir à Paris.com」より

【今日のタブチ】ドラゴンボール遊園地開設に抱いた違和感――政治はいつから“ファン活動”になったのか” に対して4件のコメントがあります。

  1. rk より:

    「あなたたちの共感を利用してまっせ~」だなんてわかりやすく説明されないからこそ
    それにいつも気付けるようでありたいですよね。
    先生、これからもビシバシ私たちを教育してください(^o^)!

    1. 田淵 俊彦 より:

      RK様
      そこに気づいているのが、すごいです!
      さすがですね。
      田淵 拝

  2. rk より:

    ありがとうございます(*´∀`*)テレ
    先生の様々な考察はいつも大変勉強になります!

    仲代達矢さんとの思い出素敵ですね~
    美しい星空が目に浮かぶようでした。
    田淵先生のお人柄があってこそだと思いました♪

    1. 田淵 俊彦 より:

      RK様
      身に余るお言葉、有難いです。
      Voicyの方は伸び悩んでおりますので、コメントをぜひ!ぜひ!お願いいたします!!!
      田淵 拝

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