【今日のタブチ】地方の人材獲得競争は大学入試から始まっている――東北大入試とポケモンGOイベント重複問題を考える

東北大学の入試日程とポケモンGOイベントの日程が重なり、宿泊先の確保が難しくなるのではないかという問題が仙台で議論になっている。
教育に携わる者として、このニュースはとても気になった。
もちろん、ポケモンGOイベントが悪いと言いたいわけではない。全国から多くの人が訪れ、地域経済への効果も期待できる。自治体が観光客を呼び込もうとすること自体は間違っていない。
しかし、今回の件で私が引っかかったのは別の部分だ。

報道によれば、市が東北大学の入試日程を十分に把握しないままイベント誘致を進めたことについて、「市の調整不足」との指摘が出ているという。
私はその指摘に大いに共感する。
このブログでも何度か書いてきたが、地方にとって大学との連携は今や最重要課題の一つである。
人口減少が進む中、多くの地方都市は企業誘致観光振興に力を入れている。しかし、それ以上に重要なのは若い人材を地域に呼び込み、育てることではないだろうか。

大学は単なる教育機関ではない。
地域に若者を集める拠点であり、人材育成の中心であり、研究開発の源泉であり、地域経済を支える大切な存在である。
大学が衰退すれば、その地域も衰退する。大学が元気なら、その地域にも活力が生まれる。だからこそ、地方自治体は大学をもっと戦略的な地域資産として考える必要がある。

今回の問題を考える際、多くの人は「大学入試とポケモンGOイベントのどちらが大事なのか」という二項対立で語りがちだ。
しかし、本質はそこではない。本来ならば両立できたはずなのである。
問題は、「なぜ両立させる発想にならなかったのか」という点にある。
特に私が重要だと思うのは、大学入試を単なる試験日として捉えてはいけないということだ。

地方都市における人材獲得競争は、実は大学入試の時点から始まっている。東北大学には東北地方だけでなく、首都圏や関西圏など全国から受験生が集まる。
受験生や保護者は大学だけを見ているわけではない。
「どんな街なのだろう」
「学生に優しい街なのだろうか」
「ここで四年間暮らしたいと思えるだろうか」
そんなことも無意識のうちに見ている。
だから、もし受験生が「ホテルが取れなかった」「受験期間に大規模イベントが重なっていた」「街として受験生への配慮が十分ではなかった」と感じれば、それは大学だけでなく街全体の印象になる。
東北大学に責任がなくても、「仙台は若者への配慮が薄い街なのかもしれない」というイメージを持たれてしまう可能性がある。
私はそこを危惧する。
大学を大切にするということは、究極的には若者を大切にするということでもある。
イベント参加者は数日後には帰る。しかし、大学生は四年間をその街で過ごす。大学院まで進学すればさらに長い。
卒業後に地域企業へ就職する人もいるだろう。研究者になる人もいるだろう。起業する人もいるだろう。そのまま地域に定住する人もいる。
地方創生の観点から見れば、まさに未来への投資そのものである。
そう考えると、大学入試は単なる試験ではない。
地方都市が将来の人材に対して行う最初のプレゼンテーションの場でもある。

今回の問題は、ポケモンGOイベントの是非を問う話ではない。
むしろ、「地方都市は大学と若者をどれだけ重要な存在として位置付けているのか」を問いかける出来事だったように思う。
地方創生の鍵は企業誘致だけではない。若者から選ばれる街になることだ。
そして、その競争は大学入試の日からすでに始まっているのである。

「TBS NEWS DIG」より

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