【今日のタブチ】なぜ私は変われたのか?“発達障害”の取材を続けて気づいた「親の力」
私はかつて、日本テレビ系列のNNNドキュメントで『障害プラスα~自閉症スペクトラムと少年犯罪の狭間に』というドキュメンタリーを制作した。その後、その取材をさらに発展させる形で『発達障害と少年犯罪』という書籍も執筆した。
発達障害や少年犯罪に関する取材を続けるなかで、私が何度も考えたのは、「発達障害のある子どもたちをどう支援するのか」という問題だった。
発達障害というと、どうしても本人への療育や訓練、学校での支援に目が向きがちである。しかし実際には、それと同じくらい、あるいはそれ以上に大切なのが、家庭での関わり方ではないかと思う。
今回、東京新聞の連載「発達障害を考える」を読んでいて、改めて考えさせられた言葉があった。それが「ペアレンティング」と「ペアトレ(ペアレント・トレーニング)」である。
ペアレンティングとは、親が子どもとどのように関わり、どのように育てていくのかという養育の考え方や実践を指す。
一方、ペアトレはペアレント・トレーニングの略で、親が子どもへの接し方や褒め方、指示の出し方などを学び、親子関係を改善していくプログラムである。特徴的なのは、子どもを変えることを直接の目的とするのではなく、まず親が変わることによって子どもの行動や成長に良い変化を生み出そうとする点だ。
この記事を読んでいて、私はふと自分の子ども時代を思い出した。
私は本当に落ち着きのない子どもだった。忘れ物は多いし、気に入らないことがあるとすぐに癇癪を起こした。ふてくされることもしょっちゅうだった。人とのコミュニケーションも得意ではなく、話をする友人は限られていた。
今振り返ると、現在知られているADHD(注意欠如・多動症)の特徴と重なる部分が少なくない。もちろん、正式な診断を受けたわけではない。そのため断定はできない。
私が子どもだった時代は、今ほど発達障害への理解が進んでいなかった。身体的な障害や明らかな障害には目が向けられても、境界的な特性を抱えた子どもたちへの理解は十分ではなかった。
「落ち着きがない」「わがまま」「努力が足りない」・・・そんな言葉で片づけられてしまうことも珍しくなかった。
だが、私は幸運だったと思う。
母がいたからだ。
母は小学校の特殊学級の教師をしていた。その経験も影響していたのかもしれない。母は私の癇癪やふてくされを頭ごなしに否定することはなかった。
そして何より、いつも私の良いところを探してくれた。
「俊ちゃんはすごいね」「よくできたね」
今でもそんな言葉を思い出す。
絵を描くのが好きな私のために、週末になると遠くの絵画教室に連れて行ってくれた。そのおかげで、何度か受賞もした。そんなときは、すごく褒めてくれた。
もちろん、叱られなかったわけではない。だが、私自身を否定されることはなかった。失敗しても、それ以上に長所を見つけてくれた。今回の記事には、「子どもの脳を育てるよいペアレンティング」として次の6項目が紹介されていた。
・ブレない生活習慣を確立する
・調和の取れたスムーズなコミュニケーションを図る
・親子がお互いを尊重して協力しあう体制をつくる
・怒りやストレスの適切な対処法を共有する
・親子が楽しめるポジティブな家庭の雰囲気をつくる
・親はブレない軸を持つ
これを読んでいて、私は確信した。
今の私があるのは、まさに両親によるペアレンティングのおかげだったのだと。
私はこれまで、自分は努力してここまで来たのだと思っていた。
もちろん、努力をしなかったわけではない。しかし、その努力ができる土台そのものを作ってくれたのは親だった。
規則正しい生活習慣。家庭の中でのコミュニケーション。失敗しても頭ごなしに否定されない安心感。そして、子どもを信じ続ける親の姿勢。今なら分かる。私はとても良い「脳育て」をしてもらったのだ。
特に母には感謝しかない。
そして今回、もう一つ印象に残ったのは、ペアトレが「親を変えるプログラム」だという考え方だった。最近では、親が練習するという意味で「ペア練」と呼ぶこともあるという。
子どもを変えようとするのではない。まず親が変わる。親が子どもの行動を理解する。親が関わり方を変える。その結果として子どもが変わっていく。この発想は実に示唆的である。
発達障害というと、私たちはつい子どもの側ばかりを見てしまう。だが、実際には子どもを取り巻く環境もまた重要なのだ。
家庭が変われば、子どもは変わる。親が変われば、子どもも変わる。もちろん、すべての問題が解決するわけではない。発達障害そのものが消えるわけでもない。しかし、子どもが生きづらさを抱えるのか、それとも自分の強みを伸ばしていけるのかは、周囲の関わり方によって大きく変わるのではないだろうか。
発達障害について長年取材してきた私自身が、今回の記事を読みながら改めて思った。
子どもを変えようとする前に、大人が変わる。そして子どもの良いところを見つけて認める。
今回の記事を読んでいて、私は改めて母に感謝した。
「日本ペアレントトレーニング子育て支援協会」HPより


